#1747 すべてが異次元だけれども、これがやがてやって来るEV像だった、BMW・iX。


 日本にいると、現状がどうなのか、あまり見えていないこないEVですが、やはり、充電における手間に課題がある状況は変わりなく、言い換えると、海外のようなハイスピード充電インフラが整っていないことが、半ば、普及の足かせとなっています。そう、足かせ。ただ、グローバルに眺めると、自動車メーカーのEV開発競争は熾烈を極めており、その足かせゆえに、国内(メーカーとは言わない)では出遅れた感が広がっています。
 と、そんな状況はさておき、では、クルマとしての仕上がりはいかがなものか。その第1弾として軽EVに焦点をあてたレポート(#1742#1743#1744)を伝えましたが、それとは逆のポジションにある、輸入車最上級EVはどんなものかをテストドライブしてきました。具体的には、BMWのiX。どうやら、日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカーに残っているようですが……、あのですね、それ理解できます、分かります。もう、RJCな人じゃないから言うわけではありませんが、トップに選ばれてもいいモデルだと思います。明後日ですな、その結果が分かるのは。

 とにかくですね、すべてが素晴らしい。振り返ってみると、BMWは、2014年にリリースしたi3において、革新的かつ大胆なパッケージングを提案していました。そこには、奇を衒った感があったものの、パッケージング含めて、EVってこうなるんだというワクワクがありました。そして、あれから8年が経過した今、このiXには、EVがもたらす近未来をもっと身近にしてくれた、そんなドキドキが表現されていました。設えがね、最高級だということもあるんですが、乗り味にしても、ハンドリングにしても、室内パッケージングにしても、あ、EVになるってことは、こういうことなのか、を、誰しもに分かりやすく提案してくれています。

 たとえば、乗り心地。テストドライブしたのは、iXのハイパフォーマンスモデルとなるM60で、タイヤサイズは275/40R22。ここまでのワイド大径タイヤ(ホイール)だと、多少どころか、はっきりとドタバタが出てきそうなものですが、ない、ない、ない。路面トレース性がすこぶる高いどころか、カーボンを組み合わせたボディは、もう剛性が高いどころではなく、ハコとなっており、サスペンションの動きがボディの歪みに乱されることなくダイレクトに伝わってくる。サスペンションの配置も、その動きにストレスを与えることがない理想たるポジションを確保し、そこにダンピングをハイレベルに整えたチューニングを与えていて、もう、至極。ハンドリングは、素直さにあふれているんですが、もう、きめ細かいのなんのって、うっとり。それは線形なフィーリングではなく非線形ではあるのですが、かといってそれを意識させるものでもなくて、ドライバーのフィールに見合った仕立てとなっています。

 パワーユニットは、前後に独立したモーターを備えていますが、M60のリアのみ高出力可能なユニットを採用。いうまでもなくですね、低速域では、先に書いたようなきめ細やかさにあふれながら、踏み込むと、その瞬間に豪快に加速していきます。ところが、その豪快さがですね、いやじゃない。気持ちのいい加速感にあふれていまして、その仕立てに脱帽。ちなみにトータル最大トルクは1015Nm、最高出力は540PSとなっています。
 ま、その分、車両販売価格も少々お高めな、いやいや、ちょっとお高い、1740万円。その価値があるか……、んー、あるかな、と。欲しいか、買えるかは、別にして。まさに異次元でしたので。ただ、ひとつ思ったことがありました。もはやフェードアウトしていくことがアナウンスされている内燃機関モデルを、あえて選ぶ理由って、どこまであるんだろうか、と。その存在価値は、曖昧さに通じるアナログ感だけになるでしょう。ただ、あまりに、EV的なデジタルと、内燃機関モデルによるアナログ感に、乖離があるような気もするのです。
 あ、これ具体的には、今、ジムニーシエラを買うべきなのか、って話に繋がります。いや、ジムニーのEVがデビューするのって、それこそ次世代、当分先のことでしょうけど。

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