#1225 その真価はゴルフ7譲り、VW・ゴルフ・オールトラック
突然に、ゴルフ・オールトラックの話です。ゴルフ・ヴァリアントをベースにグランドクリアランスをわずかに高め、プロテクターテイストを加えた、あのモデル。試乗会の好印象ぶり(#1207)を確認しようと、借り出しました。ところが、借り出してみたら、少々の物足りなさを感じました。で、それを探ろうと、全体像を見渡したところ、その乗り味はSUVというよりはいかに乗用車ライクに仕立てるかにポイントがありました。つまりですね、SUV的な緩さをいかに与えないかを命題にしていたかのような仕立て。消し去るんじゃなくって、感じさせないという仕立て。具体的に表現しますと、重心が高められた分でコンフォート感を作り込みつつも、それを感じさせないセッティングにまとめてあって、そこに感心しきりでした、と。ところがですね、そんな中にありながら、ステアリングフィールが、その良さにリンクしていない。具体的には、操舵した際にクルマが向きを変えないことに繋がる曖昧さではなく、初期の応答に不足はないものの、ブッシュやらに緊張を与えるまでの過渡域における操舵感が薄く、そこから先、シーンとしてはロールを感じるところからの操舵感が濃くなる。分かりやすい表現をすると、軽く→重くとなるわけですが、このモデルの場合は、薄いから濃いといった、フィーリングの豊かさという表現のほうが的確なのでそう書きましたが。
で、その理由はスロットル特性やらステアリングフィールを切り換えるドライビングプロファイル機能ににありました。そうなんです、ステアリングをスポーツにしたら、これが解決。それは、いわゆるクイック感を煽るとか、重たすぎるといったフィーリングではない、まさにステアリングフィールの質感を高めている、といった感じ。まぁ、スポーツゆえに、操舵感には重たさが加えられていまが、個人的には、そこに異なるフィーリングがないこと、つまり一定としたことに意義を見い出しまして、それを重たさとは表現したくない、そんな仕立てとなっていました。となるとですね、なぜ、このフィーリング（重たさは別にして）をデフォルトにしなかったのかが、不思議。日常で、ひょいひょいと操舵できることに、何かを見いだしたのでしょうかね、VWは。というわけで、その後、ステアリングモードをスポーツにしてからは、コーナリングが愉しい、愉しい。懐の深さを感じさせるシャシーセッティングに加えて、4WDゆえの安定性もあって、ゴルフ７らしいオンザレール感覚があふれ出していました。なんていうんでしょうかね、GTI的なグイングン曲がるではなく、自然に曲がっていくというあのフィーリング。SUVテイスト（重心高やらの話）によって、ハッチバックのきまじめテイストに緩さが与えられた分、ナチュラルテイストが強まったといいましょうか、そんな感じ。今回はオフロードは走りませんでしたが、以前にも書いたように、シャシーの質感が高いことから、かなり荒れた路面、乗鞍の吉田テストコースでも合格点。ストロークを上手く使って、路面からの複雑かつ大きな入力をすべていなしきるというレベルでして、走りながら、よくやるなぁ……とつぶやいたほど。まぁ、日常での大きな入力に対してはゴトン手前といった音、振動を伝えてきますし、また、その振動が残ることが、気にかかりましたが、って、このクラスでは、それとて、合格点以上レベル。いうまでもなく、不満には届いていませんので……、というか、やっぱり、まとめ方が、バランスの取り方が上手いなと感じました。
というわけで、不満はその程度。初モデルとしてはいいんじゃないでしょうか。というか、ゴルフ７たるベースポテンシャルはもちろん、モデルとしてのポテンシャルの高さから、熟成したら、さらに化けるモデルことも想像できますな。
