#1160 その仕立ては優等生的、でも、どこか距離がある、VW ポロGTI。

 ということで、ポロGTIを少々深く乗り込んできました。あのですね、なんとなく見えてきました。このモデル、VWらしく、まじめに作り込んでいまして、それがよくも悪くも、キャラクターになっていました。
 シャシーですが、実にトレース性に富んでいまして、アンジュレーションが強かろうが弱かろうが、そのピッチにバリエーションがあろうとも、タイヤは路面を離すことなく、常に接地。しかも、その際のフィーリングが手に取るように伝わってくるもんですから、ついついBセグであることを忘れてしまうほど。ゆえにグリップ感も豊か。といいますかね、意図的にグリップを失わせるようなドライビングをしない限り、そうそうにグリップを失うフィーリングは顔を出しません。コーナリングでは、インへの意図的な誘導はありますが、まぁ、嫌みといえば、嫌みだけど、ニュートラルステア好みの自分でも、それを嫌みに感じない。そう、それは、変化を感じさせるというよりは、テンポ遅れはありますけど、その遅れを含めて、誘導そのもにストーリーがあって、あまり嫌みに感じないんですね。
 で、乗り心地の仕立て方は、もちろん、ストロークを規制したサスペンションと、40扁平のタイヤによって、ハードさを感じさせますが、少々大きな衝撃でも、シャシーとタイヤでうまく連携して、ちゃんと角を取り去っていまして、ドタンに届いておらず、好印象。走ったシーンにもよるんでしょうけど、底付き感はあまり感じず、むしろ、ゴルフのほうが強く感じるかなといった感じ。で、乗り心地か。サスペンション全体としては規制されていますが、細やかに動くものですから、悪いとは感じなかった。言い方を変えると、タイヤのケース剛性の割に、ちょっと動きすぎるかなと感じるところもありますが、乗り心地とのバランスをうまく確保してあること、ワインディングでの荷重移動に必要な分と捉えると、好印象へ一気に転換します。乗り込んでいくと印象が変わる部分でしょうかね。
 で、乗り心地だ、乗り心地。リバウンドストロークがこれまた細やかで、しなやかで、美しい。つまり、突き上げ手前どころか突き上げを感じさせない。といっても、乗り心地がとてもいいわけではありません。スパルタンに仕立てた割に、ちゃんと乗り心地を確保しているって意味合いで、好印象、ってことです。つまりですね、サーキットのような路面コンディションのフラットなシーンでは、シャシーの動きが実に美しく、インフォメーションも的確に伝わってくるので、実に、実に、実に、コントローラブル。しかしですね、日常の路面、特に継ぎ接ぎだらけの本格的山岳路となると、バタバタが顔を出し、助手席に人を乗せていようものならば、申し訳なくなってきてしまいます。
 エンジンフィールは、先に書いたとおり。アクセルを踏み込んだ直後から強いトルクが発生し、DSGのダイレクト感もあいまって、ここにライバルにはない魅力を感じます。全体的にはフラットトルクフィールが強いのですが、6000〜7000回転まできっちりと回せる(パワーを引きだせる)ところも、これまた美点かと。
 ただ、個人的に気になったのは、いつまで経ってもシートポジションが決まらないこと。って、これは現行型ポロすべてに言えるのですが、ステアリングがセンターにないことやら、また、アームレストの角度に微妙なズレがあることやら、それゆえのことか、よく分からんのですが、決まらないのです。シートそのものはとってもいいですけどね……。あとは、最後まで、愉しさが湧き出して来なかったことがちょっと気になりました。いや、優等生なんですよ、優等生なんです。でも、ルーテシアRSやプジョー208GTi、ちょっと異なるとはいえフォード・フィエスタのようなキャラクターが見えてこない、見えづらい。まぁ、この辺りは、この好みの話になるのでしょうかね。
 さて、結論。このポロGTIは、スポーティテイストを高めながら、日常での快適性を上手くバランスさせていますが、助手席やリアシートに乗せるのは、クルマ好きでないと、あれこれとクレームが出るかと思われます。って、この点は、このモデルはどれも同じですな。となると、気になるのは、ブルーGT。というわけで、続けて借り出すことにしました。インプレッションは、後日に。

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