#1731 FR・コンパクト・クーペをダイレクトに表現していた、BMW2シリーズクーペ。

M240i xDrive Coupe

 BMW・2シリーズクーペって、本国では発表になっていたけど、日本でもデビューしていたんだっけ? と、振り返ってみれば、去る3月1日に日本で発売を開始していました。括りとしては、2シリーズに押し込められていますが、その中にあってプラットフォームを共用しないという異端ポジションとなっている、モデル。そうなんですね、どこかでも書いたけど、ほかの2シリーズ(カブリオレ除)がFFであるのに対して、あえてFRを選んだ、モデル。時代の流れからしたら、大きく利益を出せないようなモデルをよくデビューさせたなと、感心しきりな、モデル。ちなみに、しっかりとは調べてはいませんが、北米マーケットに詳しい方によると、あちらにはこのパーソナル志向の強いコンパクトクーペというマーケットがあるとか。ただ、それはかつての安ければいい的なFFなクーペではなく、サーキット的なハイパフォーマンススポーツカーをイメージしたFRなクーペだとか。その火付け役でもあったBRZ/86(あえてこの順!)が北米でかなり売れているとのことで、現行型は北米を優先した発表・発売が行われたほどでした。

220iMスポーツ
 ということで、BMWからデビューした2世代目となる2シリーズクーペですが、先のモデルよりも、そのあたりを強く意識したモデルに仕上がっていました。今回は、2.0Lターボエンジンを搭載した220iのMスポーツ仕立てと、直6/3.0Lターボエンジンを搭載してMさん(!)が手を加えたM240iの2台を連続して、日を変えて乗りましたが、結論を言ってしまえば、M240i大絶賛の一方で、220iMスポーツは遠慮したほうがいいモデルだと感じてしまいました。ちなみに価格は220iMスポーツは550万円、M240iは758万円で、その価格差は208万円もあるんですが、まぁ、ここまで出せる方は、200万円差なんてあまり気にならないでしょうから200万円プラスしてM240iを選んだほうが幸せ度はどーんとアップすると思います。下取り価格に、そこまでの差が出てこないことは覚悟の上で。

 で、その理由ですが、と、その前に、シャシーの違いに触れておきましょうかね。実は、ともにそれぞれのグレードに合わせたMスポーツサスペンションを搭載しているのですが、駆り出したM240iには、さらにオプション設定されているファスト・トラック・パッケージを装着。このパッケージには、19インチタイヤのほか、アダプティブMサスペンションが組み合わされており、このサスの違いが……、と語ろうとしましたが、いや、あの乗り味の違いはそれだけじゃないな、仕立ての狙いが大きく違うな。簡単にいいますとね、220iはかなりヤンチャ。相当にヤンチャ。2.0Lターボエンジンは数値的には大したことないものの、唐突を感じるほどの意図的な仕立てをしており、ATを含めたドライブトレイン系がもたらすギクシャク感(バックラッシュ含)に行き過ぎた演出を感じるほど。さらに、ステアリングフィールはクイック過ぎるし、ストローク量を抑え込まれたサスフィールは、そこにコンフォートをバランスさせとしたため動きすぎるのに規制された感が強くて、もはや好みではなく。さらに、このシャシーの動きに対して速度域を上げれば解消されるかと思いきや落ち着きのなさは大きく変わらないし、接地感が高まってくるフィーリングも見当たらず。とんでもない速度域まで引っ張れたら、別の表情を出したかもしれないんですが、つまりですね、公道で走るには、トータルとしてですね、なんて乗り難いクルマなんだと感じてしまいました。ただまぁ、こういう分かりやすい「違い」、あえてスポーティとは記しません、が存在することも、商品性としては大切なのかなとも思いましたけど。

 一方のM240iは、全てが大人といわんばかりの上質感にあふれていまして、なんつーんですかね、簡単に表現すると、ゆとりがもたらす、クオリティに長けているといった印象がありました。発進時のフィールにしても、多少のギクシャクを伝えてくるものの、意図的に感じさせつつ、トルク変動はもうなだらかであり滑らかであり、ジェントルそのもの。そのまま緩やかにアクセルペダルを踏み続けるとシフトアップしていることを意識させることなく、ま、少々1速は引っ張るもののトトトトン、トンのトンといった感じでシフトアップしています。ステアリングフィールも急にノーズがインをつくかのような、唐突さ、つまり違和感を覚えさせるようなクイック感は皆無。これ、同じ2シリーズクーペだよな、となんども自問してしまうほどに。そして、さらにうっとりなのがシャシー。しなやかなんてもんじゃない、ストローク量を抑え込んでいるはずのサスペンションセッティングなのにフラット感を上手く演出しているし、シャシーのダイレクト感はとんでもなく高いし、路面をきれいにいなしていくから、もう快適そのもの、つまり、安心感まで覚える。いうまでもなく、387PS/500Nmを発生させる直6/3.0Lターボエンジンにも感激するんですが、使いこなせないパワーフィールのことよりも、4気筒全盛のBMWであっても、やっぱり6気筒はいいよね、を感じさせてくれる、存在感があって、感激。これね、高回転域はもちろんなのですが、低回転域から伝わってくるもの。ということでですね、やっぱりね、トータルコーディネイトって大切だなと思いましたし、それを強く感じさせるモデルを仕立ててしまう、BMWに完敗(誰に負けたのかわからんけど)でした。このモデルは、フルコンプリートのMシリーズではないんですけどね。あー、あのまま、RJCカー オブ ザ イヤー選考委員を続けていたら、今年次のイヤーカーに選んでいたと思われます、というほどに、良かったです。

 そうそう、付け足して言っておきますと、そのファスト・トラック・パッケージは26万円は必須オプションですので、2シリーズクーペを購入される方は、サーキットのタイムを縮めたいと思わずとも、お忘れなく。あと、Mスポーツ・シート・パッケージ(28.9万円)もね。あのシートの、スポッと体がハマってしまう快適性と、何もしなくてもポジションが取れてしまいそうな、形状は、オプション価格以上の価値がありますので。さらに補足……、そのM240iですけどね、ミシュランのパイロットスポーツ4S(もちろん☆マーク付)をはいていました。それを目にした時に、あー、なるほどね、なるほどだ、なるほどだよなぁ、とひたすらに感心したのでした。

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