#1763 VW・ゴルフ8(TDI)があまりに良すぎたので、ガソリンターボの1.0Lと1.5Lも乗って、再確認してみました、という、話。


 先日、フォルクスワーゲン・ゴルフ8 TDIのテストドライブをした際に、あれ、ゴルフ8って、こんなに良かったっけか? という思いをもって、「#1761 フォルクスワーゲン・ゴルフは、いつの世代もゴルフしていて、いいなぁ、ってなゴルフ8(ディーゼル)の話」にまとめました。ただですね、振り返ってみますと「#1708やっぱり、ゴルフしていた、新型ゴルフ。大絶賛ではなかったりもする、ゴルフ8」で記した際の一昨年暮れのテストドライブでは、自らが期待したゴルフ像と少々離れているところがあり、それほどまでの高評価をしていませんでした。そして、あの時の評価と、先日の評価に、ここまで違いが生まれてしまったのはなぜだろうかとふと思い、あらためて、テストドライブして確認することにしました。


 今回、テストドライブしたのは、1.0Lターボエンジンを搭載したeTSI ACTIVEと、1.5Lターボエンジンを組み合わせたeTSI STYLEです。エンジン排気量がグレード名に入らないのでややこしいのですが、結論を先に述べてしまいますとね、過去に借りたゴルフeTSI ACTIVEは1.0Lユニットとリアサスペンションにトーションビームを採用しており(写真左)、これがあの時には、思ったほど良くないと、感じさせてしまったように思います。え? そもそもゴルフのリアサスペンションって2種類あるの? と問われそうですが、あるんです。ゴルフ5から採用されたリアマルチリンクに対して、ゴルフ7で軽量化とコストダウンとを狙ってボトムグレード専用としてトーションビーム式も追加。ただですね、その軽量化、コストダウンという狙いは、間違っていないと思います。軽量だからつくれる乗り味、というものがありますから。


 もちろん、ゴルフ8ではすべてが大きく進化していますので、eTSI ACTIVEとて、チープさは見当たらないですし、写真左の3気筒1.0Lエンジン出力とのバランス、そして、軽快さ、さらにはプライスダウンにも寄与していることまで考慮すると、バランスはすこぶる高いと感じました。ただ、一昨年末に書いたようにゴルフ「らしさ」が見当たらない。なにがそうさせるのかを探るには、やはり、ワインディングを走らせるのがいちばんなのですが、何か不満があるか、といえば、ない。ロールスピードも量もしっかりとコントロールされているし、セグメントを超えるかのようなどっしりとしたスタンスは、まさにベンチマークを感じさせる仕上がりとなっています。でも、何かが足りない。なんなんだこれは、と、あれこれと探ってみたところ、エンジン出力に対してシャシーはしっかりとバランスを取ってあり、つまりは、必要にして十分という性能に仕上げられていますが、エンジンフィールにそもそも刺激がない。これは、意図的にトルク感を薄く仕立ててあって、その狙いは、環境・燃費性能にあるので納得はできます。できますが、言い換えると、中回転域トルクになにか不足を覚えることもなく、さらに、スピードメーターを見ると、かなり高い速度域に到達しており、つまりは、絶対的な速度も高い。でも、ゴルフって、中回転域のトルクにワクワク感があって、それを受け止めてくれるシャシーフィールとのバランスに、そして、それを操るところに愉しさがあったはず。つまりですね、このパワーユニットのフラットフィーリングが、ゴルフに期待した「操る愉しさ」に届いておらず、評価も低くなってしまったのだ、と、自分の中でまとめました。


 一方、リアサスペンションにマルチリンク式(写真右)を採用したeTSI STYLEでは、1.5Lユニットを搭載していまして、これが、トルク感あふれる出力を特徴としており、このオーバーパワー感すらあるフィールをしっかりと受け止められるようにとリアサスペンションは仕立てられており、そこには自分が期待するゴルフらしさがありました。むしろ、このリアサスペンションにはオーバークオリティすら感じるところがあって、そういった性能、つまりは、懐の深さまで知ることができると、いわゆる、プレミアムCセグメントを感じ取ることができます。


 さらに、1.5Lエンジン搭載グレードには、1.0Lモデルには付いていないドライビングプロファイル機能(パワーフィールやサスペンション等の調整)が採用されていまして、そのモードをスポーツにしようものならば二面性を持ち合わせているんじゃないかってぐらいに豹変させてくれます。まぁ、GTI不要とまでは言えませんが、それを言葉にしたくなるぐらいのフィーリングを有していますと言ってもいいと思います。もちろん、エコモードも備えているのですが、単純にエコというだけではなく、スタンダードとなるコンフォートモードにおける発進時の飛び出し感をうまく抑えた仕立てになっていますし、また、アクセルを踏み込めば不足ないパワーを提供してくれるため、これは多用できるモードだと感じました。って、これはいつも言っている気がしますな。あ、あと、コースティング(滑走)の際に、無抵抗といわんばかりに転がっていくものですから、こういうところに、国産車との違い(フィーリング)を大きく感じます。滑らかさを作り上げるために求められる精密さとでもいいましょうか。


 つまりですね、同じゴルフながら、1.0Lと1.5Lには、乗り味に対して「大きな」違いが存在していました。これ、どちらがいい、とは言えないところで、好みに応じて、予算に応じて、選んでいいんじゃないかと、思います。ただ、両グレードでは、標準タイヤサイズおよびタイヤ銘柄が異なっており、それが乗り味に違いを与えていたこともお伝えせねばなりません。具体的には、eTSI ACTIVEはグッドイヤーのエフィシエント グリップ パフォーマンス(写真左上)、eTSI STYLEは、同じくグッドイヤーですがイーグルF1 アシンメトリック3であり、前者がコンフォート、後者がスポーティを謳っているモデルとなっており、確実に乗り味に違いとなって現れていました。個人的には、もちろん、前者が好みだったりしますが。そうそう実燃費。これがですね、1.0Lはアクセルを踏まないでも十分とばかりに走るので17.3km/L、1.5Lはアクセル踏み込むと愉しいのでついつい踏んでしまって12.7km/Lと、大きな差となって出てきました。ただ、WLTCモードは、1.0Lが18.6km/L、1.5Lが17.3km/Lですから、あそこまでの差が出てはならんのですけども……。

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