#1756 改良と仕立てでかなり良くなっていた、フォルクスワーゲン・T-Roc R。


 ファーストインプレッションがあまり良くなかったモデルがありました。20年夏に導入された、フォルクスワーゲン・T-Rocです。当初はディーゼルユニットだけだったこと、組み合わされていたタイヤサイズがVWらしいシャシーフィールを乱していたこと、そこに演出しすぎたスポーティ感があって、うーむ、を感じてしまっていました。そのため、その年末(翌年だったか?)のドライバー誌の輸入車選び企画では、高得点を付けられなかったことを覚えています。そのT-Rocがですね、昨年マイナーチェンジを行いまして、併せて、ハイパフォーマンスモデルである「R」を導入したというので、さて、どう変わったかをテストドライブしてみることにしました。というわけで、ここでは最新モデルの「R」だけのインプレッションとなります。

 結論からいいますとね、あー、コンパクトクロスオーバーモデルとして、Rとして、こういう走りを目指していたのか、が、ダイレクトに表現されていました。もちろん、Rですから、路面が整えられていないシーンでは、意図的に規制されたサスストロークと、ハイトの少ないタイヤサイズから、キャビンへとゴトゴトといった音、振動が伝わってきまして、スポーティたる素質を感じさせてくれます。ただですね、これがですね、いやー、普段遣いで不満をそれほどに感じないレベルに抑えられていまして、ゴトゴトったって、カドの取れたゴトゴトで、ゴとコの間レベルであり、そこにまずもって感心を覚えました。もちろん、この手のモデルとしては……、という前提ありきの話ですので、人によっては、固さと捉える人もいるやもしれませんが。で、で、どんなタイヤをはいているのかとチェックしてみると、そのサイズは235/40R19。このシャシーに、これだけ大きなホイールを採用していることを考えると、よくあれだけの乗り心地を確保しているなと、感心しきり。で、タイヤ銘柄を見てみれば、なんと、ハンコックのventus S1 evo2。愛車、フォード・フィエスタの標準タイヤが、ventus S1 evoでしたので、剛性感を丁寧に作り込んだ上に、快適性を表現したあのフィールに懐かしさを感じました。あ、今はもうはいていないもので……。

 エンジンは2.0Lガソリンターボでハイパフォーマンス仕立てがされており、その最高出力も300PS/5300-6500rpm、最大トルクは400Nm/2000-5200rpmと、1540kgのボディに対しては十二分。というよりも、組み合わせた7速DSGの許容範囲内に止めただろうことも推測されますが、ま、400Nmもありますからね、これで十二分だと思います。ちなみに、そのパワフルさは公道では引き出し切れないほどで、これもまた、この手のハイパフォーマンスモデルにありがちな話。ただですね、そこまで回さなくとも、日常域にワクワクに通じるような愉しさがあります。過給器付内燃機関の盛り上がり感とでもいいましょうか。極太トルクがもたらす扱いやすさとも言えましょうかね。といいつつも、ちょいと走らせてみると、そのトルクフィールに打ちのめされつつ、意図的に仕立てられたクイックなハンドリングと強烈なグリップを提供するシャシーに驚き、不快さを感じさせる手前の乗り心地も加わって、T-Rocのコンセプトをここぞとばかりに叩きつけられ、恐れ入りました、といった感じになってしまいます。

 そして、いちばん感激したのは、トランスミッション、DSGの制御でしょうな。もはや、デュアルクラッチ式であるウィークポイント、つまりはシフトショックや、シフト時の戸惑いこを見せないどころか、アイドリングストップからの復帰もまったくもって問題なし、なし、なし。発進時に、意図的な少しの音、振動が存在しますが、Rゆえの演出といった感に止められています。そのほか、印象に残ったのは、リアシートにおける乗員の座らせ方。このT-Rocでは、そのコンセプトからリアに人を乗せることをあまり考えていないだろうなと思いきや、これがですね、足下スペースは広くはないものの、ひざ下までサポートするクッション部、ショルダーを確実にサポートするシートバック部と、まさにスポっとはまってしまう感覚があって、好印象。Rゆえのシート形状ってこともあるのですが。
 ということで、T-Roc(R)の評価は一気に好転したのでした。そうなんです、ヨーロッパのモデルって、改良後にこうやって印象ががらりと変わることが多いんです。特にフォルクスワーゲンとルノーは。
 
 

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