#1740 ジープ・グラディエーター、すごくいいんだけど、ネックは価格。そうそう、八重洲出版のJeep spirit vol.2発売しました。


 執筆したムックが発売の運びとなったようなので、そこで取材したジープ・グラディエーターの話を。このクルマですね、ラングラーのホイールベースをさらにストレッチし、アンリミテッド(5ドア)のラゲッジルームをばっさりと切り落としてそこをベッドにしてしまったモデルで、つまりは、ダブルキャブなピックアップトラック。ただし、その全長は5600mmもありまして、アンリミテッドでは4870mmでしたからなんと730mmも長くなっています。ちなみに、ホイールベースは3010→3490mmと480mmもストレッチされていますので、デザイン上ではなんかバランスに欠けるなぁといった印象もあります。ラングラーを見慣れていますしね。で、この全長、ドライビングという面では、乗りづらさを感じるだろうと思ったのですが、想像していたほどには感じない。そもそも、現行ラングラーは最小回転半径が小さくなっており、取り回しにそれほど苦労しないことも功を奏しているのでしょうな。とはいっても、全幅は1900mm近くありますので、狭い路地でのすれ違いなどには気を遣いますけども。あとは、時間貸し駐車場を探すのに苦労します。さらに、賃貸に住んでいる方は車庫証明を出せる駐車場を探すに苦労するでしょうね。


 そんなグラディエーターですが、トラックゆえにどこまで不快さがあるかと思いきや、むしろ快適性にあふれていました。それはレギュラーモデルのラングラー以上かもと感じたほど。本来、ピックアップトラックのリアサスペンションは相当な荷重に対応させるためにリジッド式を採用し、そこにリーフスプリングを組み合わせるのが常。そして、荷重が掛かることを想定したセッティングが行われているために、空荷では、ひたすらにリアがはねてしまう、つまり、乗り心地がよろしくないものです。ところが、このグラディエーターは、ラングラーをベースにしているため、そうなのですよ、リアサスペンションにコイルスプリングを組み合わせたコイルリジッド式を採用おり、空荷であっても乗り心地が悪くない。そして、さらにはロングホイールベース化により直進性が高められていることはもちろん、それなのに曲がるじゃん、という、まさにフツーな感覚にあふれています。このあたりは、トヨタ・ハイラックスとは作り込みに対する考え方が大きく異なっているところで、あちらは、実用性を最優先したモデルであり、グローバルでは想定以上に荷物、さらには人までのせられて、過酷な地形を走破しなきゃならんのですから。ということで、ハイラックスと、このグラディエーターを安易に並べるのではなく、それぞれの特徴をしっかりと掴んで評価することが大切かと思います。そうそう、この商用モデルに乗用車のパーツを当て込みタフ手前を望む人向け商品というアプローチは、先日、記した
#1736のスペーシアベースと同じであり、ひとつの流れとして確立されてきている感がありますな。


 さて、日本仕様のグラディエーターは、オフロードパフォーマンスに長けたアイテムを標準装備したルビコンのみとなります。別にルビコンにしなくてもいいんじゃないかなと思いつつ、ま、あまり台数を期待できないモデルでしょうから、それもいいんじゃないでしょうか、といった捉え方をしています。ただ、それよりも驚いたのは、ルビコンって、こんなに乗り心地良かったか? というもの。標準装備されるBFグッドリッチのマッドテレーンからは振動はもちろんパターンノイズも伝えて来るんですが、普段、乗用車に乗っているという編集者は気にならないと言います。ま、たしかに、ほかのノイズがあれこれと出ているので、タイヤ起因の音・振動が気にならないのかもしれない、とは、思いましたが。


 
 あとは、やっぱりパワーユニットはV6のほうがいい。もちろん、2.0Lターボには、扱い難さはないし、高回転まで軽快に回るし、何よりも燃費性能に長けています。でも、V6のほうがナチュラルなフィールがあるし、低回転域でのトルク感が丁度いいし、アクセルコントロールがしやすいことを含めて、個人的にはV6/3.6Lのほうがいいと感じました。ま、日本では、自動車税を多めに払わねばなりませんけども。オフロード走破性は、ルビコンですからして、タイヤが浮いてしまうようなシーンではフロントのスタビライザーを解除すれば、サスペンションを存分に伸ばして地面を捉えようとしてくれますし、それでもグリップを確保できないならば、フロント、リアにも設定されたデフロックを使えば、もはや、最強なオフパフォーマンスを披露してくれます。ま、そこまで使わねばならない状況って、相当な極悪シーンだったりするんですけどね。


 というわけで、いいんじゃないでしょうか、グラディエーター。ただですね、高い。高すぎです。ちなみに、デビューした時、といっても21年の11月30日ですから1年も経過していないんですが、あの時は770万円。それが装備の変更ないまま3月に810万円に。そして、6月には840万円、さらに8月1日には920万円に……。おいおいおいおい……。1年で150万円も上がっているんですけど。インポーターにはそれ相応の諸事情があるんでしょうけど、ここまでの割高感は、さすがに嫌気を覚えてしまいます。ジープってね、内容の割に安いってのが、ウリだったし、本国ではいまだにそうだったりするんです。なんか、違う、日本のジープって、そう感じています。

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