#1736 これ、今、求めている人多いと思うな、でも、いやらしさがあるんだな、ってな、スズキ・スペーシアベース。
記さねばならないネタは数多く、というか、多すぎてですね、収集が付かなくなっています。いちおう、出版社の経費で取材した内容は、出版物が発行されるまでは、ここでは書かずに、つまりは止めています。ということで、今日は少し時間もできたので、一気に放出しようかと。ということで、まずは、スズキのスペーシア・ベースから。
そもそも、軽自動車への注目が安いからという理由があるようですが、それが良いのか悪いのかはさておきですね、軽自動車であれこれと不可思議なクルマが登場しています。新しいアイディアから隙間を狙ったような商品まで。その中で、実用一辺倒であるはずの商用系を、乗用的に使おうという流れがひとつあります。これ、RVブーム黎明期のヨンクにあった流れでもあるんですが、あの時は、実用系が乗用系へとスイッチしていきましたが、今回の場合は、軽商用に乗用車的な要素を詰め込み、結果として、軽商用のままという、流れ。あ、ヨンクも最初そうだったか。
ホンダ・N-VANや、先日フルモデルチェンジを果たしたばかりのダイハツ・アトレーなどが、それ。ただ、いずれも商用であることをあえて捨てず、つまりは最大積載量を350kgとしており、N-VANではプログレッシブレートのバネを採用するなど、それなりに工夫しています。そう、正攻法からの工夫。ただですね、いずれにしても荷物を詰むことが前提なので、空荷だとなんだかんだいっても、LT規格のタイヤを組み合わせなければならないこともあって、乗り心地に固さが出てしまいます。ただ、周囲にもいるんですが、この手の軽商用バンを、荷物をフル積載することはないものの税制の面からリースで利用している方がいます。そういった方は、リアシートは使われるので4名乗車であることが多く、移動がメイン。つまり、荷物は積まない。ま、そもそも、人が4名乗車するのにあのリアシートはおかしいって話……、そう、商用車の基準と税制云々がおかしいんですが、ま、致し方ない。
このスペーシア・ベースは、アプローチとしては乗用車系のプラットフォーム(つまり、スズキでいうところのエブリイではなくスペーシア)をベースに、リアシートをエマージェンシィ的なタイプへと変更して4ナンバー化。スペースを得たラゲッジルームには専用ボードを備えて、机にしたり間仕切りにしたりといったアレンジを提供。リアシートはシンプルだけど、折り畳むとイスの腰掛け部分に使えたり、フラットフロア実現に役立ったりと、つまり、あれこれ使える、あれこれと遊べそうなモデルです。つまり、日常は快適に乗りこなしたい、でも、ギアとして使いたい、つまり、仕事で使われている方のように、あそこまでは積載しない、でも、あれこれ積む、でも、リアシートはあんまり使わない、そういう方向けのモデルなんですな、スペーシア・ベースって。
で、もうひとつのアドバンテージは、4ナンバーモデルなのに、走行性能は、そのまんま、スペーシアシリーズであること。フロントマスクは改良前のスペーシア・カスタムのものを用いて、ちょいと色合いを変えて、タイヤは、ワゴンRスマイルで採用した低転がりタイプを組み合わせています。その仕立て方になんとなくいやらしさを覚えながらも、まぁ、あれこれと考えたなぁ、イマドキだなぁを感じました。個人的には、ギアであるならば、そこにはフィールドという期待感が生まれるわけだから、多少なりともクロスオーバーテイストをサスペンションで演出すれば、もう、大ヒット間違いなしだったのにと思うわけですが、そこは重量を抑えなければ、この商品は成立しませんでしたから、早い段階で断念したんだろうな、というところも見えてきます。おもしろい商品だと思いますよ、思いますけどね、これはスペーシア・ベースだけではないんですが、昨今、あまりにいかにあれこれと流用して異なるモデルを作り上げるか、ってのが、ひとつの流れになっているようで、そういった観点からは好きになれないところがあります。それが、さきほど記した、いやらしさになるわけですが。
このスペーシア・ベース、売れるでしょう。たぶん。じわじわとね。そうそう、あれこれとシートアレンジを撮影して、ひと休みとばかりに、折り畳んだリアシートに座って、買ってきたパンをテーブルに並べたら、このスペーシア・ベースで、パン屋さんを開いてみたくなりました。そう、このクルマにはそういう魅力がありますな。