#1722 現行型MINIの中で、ベストバランスじゃないか? を感じた、MINI COOPER S CLUBMAN ALL4。
乗り込んでいたつもりが、乗り込んでいなかったモデルを乗り込んでいます。そう、公道試乗会という短時間では分からないポテンシャルを観察する(したい)と思う車種を選んで、テストドライブしています。そんな1台が、このMINI COOPER S CLUBMAN ALL4。ってか、このMINIの車名表記、グレード名が先に来るので、ぱっと見、分かり辛さがありまして……、云々。というわけで、でっかいほうのMINIの、クーパーSですな。ちなみに、MINIにはでっかいのと、ちっさいのと、2ラインあると語っても、良くも悪くも理解されません。でっかいの=5ドアと思われてしまう節がありますし、セグメント分けって感覚が広く一般にはないこともあって。ま、現行型CLUBMANは、いわゆるプレミアムCセグメントに属するモデルで、ほかブランドのモデルでいえば、フォルクスワーゲンのゴルフにあたります(小さいほうはVWでいえばポロね)。
さて、クーパーSといいますか、昨今の高出力かつスポーティサスペンションを組み合わせたグレードとして、BMWでは2シリーズグランクーペM235iにて、相当な感激を受けましたが、今回も同様でした。アダプティブサスペンションがプラスされていることもありますけどね、組み合わされている18インチは、標準の17インチよりも行き過ぎなはずなんですが、それを感じさせないどころか、路面トレースが実に美しい。アンジュレーションを心地よくなぞり、もう、4輪がばらばらに動く様が気持ちいい。もちろん、工事後の継ぎはぎ路面では、落ち着きのなさを感じさせるところもありますが、気にならない。深くストロークした際のリバウンドフィールには、確実に突き上げ感から逃げようとした仕立てが意図的に込められていることを感じさせますが、よくやってるじゃんと評価したくなるほど。なんていうんでしょうかね、クーパーSたる走りを確立しながら、日常使いに言い訳をしない、このスタンス、もう天晴れです。
といいつつ、助手席Aピラー付近からビビリ音が出ているあたりに現行型デビューからの年月(登録年月日じゃなくってね)を感じさせたりしますが、いや、いいでしょ、このバランスと、すべてのマイナス面が吹き飛びます。そして、この仕立て。この車両にはMINI YOURS TRIMというパッケージが採用されており、スポーツシートはもちろんレザーで、ホイール(18インチ)はユニオンジャックモチーフだし、なんつーんですかね、懐に余裕があるならば、それも付けといてといいたくなる内容。実際には71万円ですから、そんな軽く言えるものではないんですが。ま、それぐらいに、魅力あるパッケージ。さらに、このボディカラーがですね、地下駐車場で見たときは黒かと思いきや、光があたると濃紺という、見た目も塗装も深みのある色合い。そこに感心していると続いて気付きます、あれ、ホイールのスポークサイド面にも、ちょっと異なるけど、濃紺が採用されているじゃないか。そして、気付けばですね、散々に色合いに文句を垂れていた、iPhone13miniの黒に見えるけど、濃紺だよーんという、ミッドナイトという色合いとコンセプトが同じであることに気付き、iPhoneを見る目まで変わってしまいます。
と、天晴れなモデルだったんですが、エンジンフィールについて、最後にひとこと。そのサウンドはブリッピング含めて、スポーティユニットであることを感じさせますが、普段は実に大人しい、というよりも扱いやすい。唐突なトルク変動がなく、普通に運転していれば、高速道路での燃費は20km/Lを超えてしまうというポテンシャル。もちろん、アクセルを踏み込めば、どこまでも加速していく、でも、暴力的ではないという大排気量NAエンジン的なフィーリングに仕立てられており、圧巻。ま、これ以上を求める方はJCWをどうぞ、という棲み分けも完璧。ただ、走行フィールでいうならば、日常使いなブレーキ踏み込みに関して、いかに踏み込みを加減したところで、ACCを使おうにも、最後の最後に、んがぐぐっといわんばかりに停止するところはいかんとも……、いや、いいのか、クーパーSだから。
そう、このなにか指摘したくなるけど、まぁ、いいや、と思えてしまうところが、思わせてしまう、そのバランスが素晴らしい。それにしても最後の最後まで進化を止めませんなぁ、欧州車は(CLUBMANのフルモデルチェンジはもう少し先だろうから、改良あるか)。そんなことを改めて感じた次第。こういうスタンス、大好きです。