#1221 最近、見えづらくなっている、走るというクルマたる本質。

 改良を受けたランドクルーザー200系についての原稿を書いていて、文字数オーバーから、省いた部分がありました。かつてのライバルが、いつしか、手が届かぬ価格帯になってしまったって話で、ランドクルーザーってまだ手が届くギリギリにあるよね、そして、余裕がある人向けにはちゃんとレクサスLX570(1100万円)を用意しているしね……、という流れにするつもりでした。 で、その時に販売価格の過去と現在を調べたらですね、まぁ、高くなったとは思っていましたが、ここまで引っ張り上げましたか、といわんばかりの上昇をしていました。
               95年当時      現在
 レンジローバー       595万円〜  →  1338万円〜
 メルセデスベンツGクラス  750万円〜  →  1018万円〜 
 ランドクルーザー      〜390万円  →  〜約680万円 
 まぁ、レンジローバーとGクラスは、そのポジションを意図的に高めたり、ブランドも同様のあれこれがありましたし、安易に横並びで価格アップを語れないところもあります。ただ、あの頃を知っている者としては、懐かしいといった感じでしょうかね。振り返ってみれば、チェロキーも、ディスカバリーも、ブレイザーも、300万円前後で、並んだ時期もありましたし。ま、円高という時代の流れもありましたけども。と上で比較した価格帯上昇はアッパークラスでの話ですが、全体的にクルマの価格が上がっているのは事実です。それは原材料の高騰もありますし、以前はマストではなかった安全性が求められ、それに付随する装備やらが付きましたから……、とは、メーカー側の弁。まぁ、そのとおりであり、これを言われると、消費者としてはぐうの音も出ません。ま、少しは出るか。
 ただ、個人的には、それよりもほとんどモデルで上級グレードに誘導される、つまり、さらに高いほうへと導かれる、この販売方法におや? を感じることが多くあります。たとえば、吉田的には十分だと思っているマニュアルエアコン装備のボトムグレードがあって、その上のグレードとの価格差が30万円あったとしましょう。でも、その上のグレードは、アイドリングストップがついて、HIDヘッドランプになって、フォグランプがついて、マルチインフォーメンションディスプレイがついて、本革巻きのステアリングホイールになって、パドルシフト(CVT)までついて、さらに、エアコンはオートどころか、左右独立温度調整式になると、言われたら……、そりゃ、上のグレードを選びたくなるもの。逆に、それでもあえてボトムを選ぶには、相当な覚悟というか、自分を納得させるあれこれが必要になります。さらには、受注生産になるとか、納期が遅くなるとか、値引きは厳しいとか、止めの一撃に下取り価格の話までされてしまうと、選べません、というか、選びにくさがあります。
 まぁ、ユーザーがより快適な装備やらを欲しがるという傾向があるそうですから、このリーズナブル感を利用して、上のグレードへと誘う手法を否定するつもりはありません。ただ、それによって、クルマたる走るという本質がどんどん見えにくくなっていっているような気がするんです。十二分過ぎる装備のモデルを販売して、いかに支払い額を増やして、そこから利益を出すのではなく、オーナーがこれで十分を感じ、そして満足してもらえるようなグレードを選んでもらえるようにして、そして、そのブランドに対しての愛着を増すような誘導こそが、必要なんじゃないか、と。ま、理想論ですが。
 いずれにしてもですね、購入する側が、これでいい、これで十分という目を持っていないといかんなと思います。ちなみに、先に挙げた例(装備と価格差)は、スバル・フォレスターのもの。個人的にはボトムグレードを購入して、その浮いた分の30万円をガソリン代に使って走り回ったほうが愉しくなるのになぁと思っていますが。

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