#766 トヨタといえばHV、でも、コンパクトガソリンは元気がない、って話。
先ほどそんなカタログ企画の原稿執筆を終えました。今回はコンパクトカーを26車種。で、少し前から気付いていたのですが、売れ筋モデルであるコンパクトカーに対して、各メーカーの戦略の違いから、その差が強く浮き上がっています。
たとえば、トヨタ。ハイブリッドモデルが好調であることはご存知のとおりですが、小排気量ガソリンエンジンモデルではトピックが少ないという現状があります。いちばん分かりやすいのは燃費性能。カタログ燃費値での比較ではありますけど、ほかメーカーが20km/Lを軽々と突破したかのような値としているのに、そこには届かず。クルマとしてスペシャル感のあるイストで17.2km/Lは許せたとしても、スタンダードたる存在であるヴィッツがオートストップが付いていたとしても21.8km/Lに留まっています。あとは、衝突軽減関係に注目が集まっている安全装備。これも、トヨタはウィークポイントとなっており、スズキと三菱も同様に……。なぜ、こうなっているのか。各メーカーに技術力がないわけではなうk、たんにタイミングを逸してしまっているから。低燃費を狙う技術にしても、安全性を謳う機能にしても、プラットフォームがそれに対応していなければならないのですが、アイドリングストップに対応できるパワートレインであるかとか、VDCの世代であるとか、そう、世代的に対応できないだけのこと。ですから、最近デビューしたフィット、アクセラ、ノートはしっかりと網羅しているわけで、スバルは先を見越して動いていたこともあって一昨年のデビューのインプレッサでも対応できています。
まぁ、そのスバルインプレッサスポーツにしても、実は、ほかのモデルと比較すると燃費性能では優れているとは言えないレベルにあります。良くても17.6km/Lですから。しかし、それを許せてしまう何か、つまり、アイサイト、AWD、コンパクトではないといったことまで、まさにウィークポイントを超える魅力を揃えており、この燃費の件だけが前面に出されることがありません。と考えると、商品性たる戦略でフォローできるのかなとも思ったりもします。すべてにおいて満点である必要はないってことですな。
トヨタは、ブランド性と販売力という、ほかブランドが持ちたくても持てないほどの、強力な武器をもっていますから、ほかのモデルよりも商品性に少しの不足があったとしても、どのモデルにも魅力があります。しかし、今回の安全装備と燃費は、優先度が高い項目ですから、そろそろその販売手法だけでは厳しくなっていることを感じます。なんてことを言えるのも、ベースポテンシャルが高いから。大幅に手を加えたプラットフォームにて登場したラクティスに試乗した際、10年は通用するポテンシャルを持っていることを強く感じましたし、あのタイミングで作られたモデルは、特に走りの面において高いスタビリティにあふれ、それが安心感につながっており、ヴィッツシリーズというくくりとして、とても高く評価していました。ただ、この戦略のスタート時に、そこまで組み合わせられなかっただけのこと、と捉えています。だから、心配である、と。もちろん、一介のライターが気付いているレベルですから、先を見越しての開発が進んでいることでしょう。ただ、そのヴィッツにしても、現行型はライフサイクル後半へと入ったばかり。ですから、開発中のダウンサイジングターボにしても、次期型で採用するのか、それともマイナーチェンジのタイミングで現行型に積んでくるのか、それとも日本仕様はハイブリッドへ集約しようとしているのか、また、安全装備の投入時期にしても、その戦略によってポジションが大きく変わってしまう可能性があります。まぁ、トヨタはこの状況を指をくわえて見ているわけありませんから、その反撃は相当なものになることでしょう。それにほかのメーカーがどこまで耐えられるか、どこまでオリジナリティを出せるかにそれぞれが生き残れるかどうかのキーがあると思っていますが。

