#1771 新型トライトン(プロト)が手に入れていた乗用車的な感覚と、ほか三菱車のオフ走破性の高さに驚いた、話。



 三菱自動車の、オフロードを走れるモデルの、オフロードテストドライブへと出かけてきました。場所は、三菱の北海道十勝研究所内にある十勝アドベンチャートレイル。ここは、現在ではクローズドとなっているオフロードコースですが、あの増岡 浩氏が、重機とチェーンソーを駆使して作り上げた渾身のコースだったりもします。と聞くと、ハードなシーンばかりが連続すると思われるかもしれませんが、そんなことはなく。地形のアップダウンをうまく利用しつつ、あちこちに先の見えないタイトコーナーを設定し、ところにどころにハードなオブスタクルを用意。もちろん、ハードなシーンを迂回できるルートも用意されていますから、車種のレベルに応じたテストができる内容でして、一見、特徴がないと思われてしまうかもしれませんが、実はよく練られたコースとなっていました。



 で、今回テストドライブしたのは、来年初頭の発売を予告されたピックアップトラックのトライトンプロトタイプのほか、デリカD:5、アウトランダーPHEV、そしてデリカミニの4車種。先方の狙いは、それぞれのオフにおけるポテンシャルを確認してもらうことにあったようで、それゆえに、モデルによっては迂回路が設定されているものの基本的に同じコースが設定され、比較できるようになっていました。ただまぁ、たとえばモーグルではトライトンでは余裕ありあり、でも、デリカミニではギリギリといった感じもありましたが、トライトンがチャレンジしたヒルクライム(フラットだったけども)をアウトランダーPHEVでもアタックできるなど、比較することで優劣を感じさせるのではなく、ほかの三菱モデルの見えづらいオフポテンシャルを試すことができた、という面で、実に「愉しい」試乗会でした。


 ということで、今回は、このコースを走った4車種を交えて書いてみましょうかね。コースレベルは、モーグルは全モデルで下回りを擦らない程度とされ、ロックセクションはトライトンのみ3レベルある真ん中を走り、ヒルクライムはトライトンとアウトランダーPHEVのみ許されていました。ちなみに、路面状況は、前日に大雨が降ったためぬたぬただった、でも、早めに雨が止んだおかげで乾きつつあるけど、水たまりもあるってな感じでした。この試乗会で印象に残ったのはタイヤがグリップを失った際の制御でしょうかね。自らの感覚にもっとも近かったのがトライトンで、アウトランダーPHEVがいちばん遠かったかな。


 かつてのクロカンヨンクは、対角線上にあるタイヤがグリップを失った場合、アクセルを踏み続けていると路面を崩していってしまいますから、無理をすることなく、いったん、下がってスタンスを整えて、アクセルワークやらを見直して、再アタックすることが基本でした。スタックしているのに、アクセルペダルだけ踏み込んでいたら、路面状況をさらに悪化させてしまいますから。しかし、昨今のモデルは、クロスオーバーモデルはもちろんですが、アクセルを踏み続けることで進み続けたいという意志表示をしなけければなりません。デリカミニですとあれこれとあって諦めが早いこともあり(それでもぬかるみやスノードライブでの制御はすごくいい)、いったん下がって、やり直そうという気になるのですが、アウトランダーPHEVは極端な話、クルマの挙動が大きく変化しないようなシーンであっても我慢して踏み続けなければならないので、ほんと不可思議でした。ちなみに、写真のデリカD:5はリアタイヤを大きく浮かせていますが、3輪が接地しているので、このシーンでは難なく進んでいってしまいます。


 一方のトライトンでは、そもそもタイヤが浮いてしまうようなシーンはほとんどなくてですね、2周を許されたドライブのうち、1周は4WDはフルタイムかつドライブモードはノーマルのままで難なく走りきってしまったほど。言い換えると、多少のコツは必要かもしれませんが、フルタイムをセレクトしておけば、そのままに走れてしまいます。2周目はドライブモードをグラベルに切り替えましたが、興味深かったのは制御がしっかりと変わること。そうかー、グリップアシストが違うのかー、と思うでしょ? ところがですね、これがハンドリングのほう、つまり、新たに採用されたAYCの介入のほう。回頭性を増していましてね、コーナーでグイグイと入っていくんですね。なんかね、トライトンが、まだまだいけるぞ、もっと切り込んで、アクセル踏んでけ! と、誘っているかのよう。言い換えますと、初心者のころに先輩を乗せて峠を走った時に、助手席からとんできた、言葉だぞ、この誘い方は! と思ってしまいました。ちなみに、この写真は、増岡浩さんによる華麗なドライビング。同乗試乗もあったのですが、彼の場合の意のままには、まさに思うがままにに操る感じでして、ひたすらに天晴れ。えっと、今回の試乗会では、この黒いトライトンを運転しているのは、すべて増岡さん。白は走らずの汚さずの撮影用、オレンジはマスコミ関係者がドライビングしている車両となっています。


 あれ、結局トライトンの話になっている。えっとですね、その詳細は後でしっかりと書くとして、やはり、新型にスイッチした際にラダーフレームを一新できたことで、狙っていた性能のすべてを手に入れていた感を強く覚えました。簡単にいいますと、ラダーフレーム構造のモデルの宿命である、走行性能における曖昧さが、うまく整えられている。残ってはいますよ、いるんですけど、不満だとは感じさせないレベルにまで落とし込んでいる。ですので、クロカンで育ってきた者としての評価としては、まさに乗用車的。ステアリングフィールに軽快さがある上にダイレクト感もあって、日常での取り回しに、最低回転半径含めて、不足を感じさせない。ディーゼルエンジンは高出力版を搭載しているものの、低回転域におけるラグもトルク変動もみあたらず、そして、タービン切り替え時の間も同様に意識させず、それはあたかも、大排気量エンジンかのよう。分かりやすい表現を用いるとですね、車庫証明と予算が許すなら、欲しいと思ってしまったほどでした。ま、このあたりの仕立ては、現行型ジムニーでも、いい意味でうまく整えられているんですが、価格帯が異なること、時間が経過していることもあって、ジムニー以上の乗りやすさを感じました。
 と書き始めると止まらない。あれこれはまた後日に。写真、オフィシャルで用意していただいたものに変えました。

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