#1767 あれこれ考えると、よく製品化できましたね、と感心しきりだった、三菱・デリカミニ。
書いていなかったじゃん、という新型車試乗会が2つありました。ということで、その1台目、三菱のデリカミニについて。このモデルは、いろんな意味でよくできていました。昨今の、スタイルだけを変えてSUV風を装うモデルがメインストリームになりつつある中、現在の三菱ブランドにおいて、できること、できないことを明確にしながら、三菱らしさとは何かを自問し、まずは、上手に表現できていたところは高く評価できると思います。デザイン、走りともに、ね。
ベースとなったのは、eK Xスペースですが、意外にもオリジナルたるトピックは数多くあります。デザインでは、ひと目見ただけで強烈な印象を与えるフロントマスクを組み合わせ、あんまり変わっていない感を覚えつつも比較するとずいぶんと手を加えましたね、と言いたくなるリアセクションをトピックとしていますが、このデザインについては賛否両論あるかと思いきや、周囲からはマイナスな意見は出てきていませんし、自分も、いいんじゃない、これ、と捉えています。ただ、冷静に眺めると、このフェイスって、最新型デリカD:5ではなく、フェイスリフト前のテイストでして、ファミリーとしての整合性があるような、ないような、微妙なところ。いや、旧フェイステイストが強いように感じます。でも、不思議なのはデリカファミリーの一員であると認識させられてしまうところ。なぜなんでしょうかね、これ。あとは、ボディカラーについては、新色のグリーン系のイメージが強烈なのですが、ほかの色合いを目にすると、意外にそれぞれにスポーティとか、やんちゃとか、イメージが変わるもので、感心しきり。まぁ、これ、造形が、デザインがなせる技なんだろうなと、デザイン素人は感じています。
もう一つの、その走り(以下4WD)ですが、ダンパーの低速域と高速域での動きを、よりリニアに感じる方向へとチューニングを行い、さらにタイヤのハイトを1サイズとはいえアップさせた165/60R15を採用したこともあって、結果として、ストレスなく動き、かつ、路面からの大きな入力に対しては懐の深さを感じさせる、質感を与えています。これ、ベースモデルのeK X スペースも倣っていいんじゃないかと思いましたが、ま、あちらは街乗り重視であることから、異なるセッティングが必要なようです。ま、コストもありますしね。ワインディングでは、ロール量が減ったという印象はなく、ロール剛性をしっかりと確保していたことが、強く印象に残りました。結果、わかりやすく表現しますと、走行速度域とステアリングの操舵量に応じて、グリップ感をしっかりと伝えるスタンスへと導いてくれるため、スタンスが決まると、しっかりと踏ん張ったままにコーナーを駆け抜けていきます。そうなんですね、ロールします、深くします、させています。でも、その過程に不安を感じさせない仕立てとなっており、それが故にドライビングの愉しさを引き出してくれていますし、安心感もそこにはあります。また、軽乗用車にしてはハイレベルなフラットライド感を作り上げていまして、特にリアシートにおける乗り心地は、これだけで随分と変わるもんだなといった感心しきりでした。このあたりは、バッテリーを含めたEVシステムによって重たくなった、eK X EVも同様であり、まさにしっとり感がもたらす快適性を手に入れていました。
ラフロード走行については、最低地上高が5mmアップしただけで、不整地をアタックできる性能を手に入れた、とまではいえませんが、比較すると接地感が明確になっているため、アクセルを踏み込みたくなる衝動に駆られます。グリップコントロールも、滑りを許す方向でセッティングされているため、つまり、雪でも泥でも脱出性能をアップさせています。ヘビーデューティヨンクレベルには届いていませんけども。そうなんですね、ベースモデルでは、ラフロードをいそいそと走り過ごすだけだったのですが、デリカミニでは積極的に走りたくなる、そんな魅惑を備えていました。言い換えるとですね、キャンプ場に出かけたところで、サイトまで難なくたどり着けるアドバンテージはその+5mmにしかありません。でも、出かけたくなるという誘いは、それ以上。そこに、デリカミニの真価を読み取りました。