#1757 上がりのクルマを、ジムニーにするか、ジムニー・シエラにするか、ちょっと考えてみた、話。



 さてと、ジムニーの話をしましょうかね。我が家からジムニーが去って1年が経過して、今、フォード・フィエスタ1台では満足できないどころか、不整地へと気軽に足を踏み入れられないストレスがどんどんと膨らみつつある状況にあります。実は、これ、30年前にも感じたことでした。あの時は、クロカン(風)ヨンクを手放して、ワゴンRの4WD、続いてファミリアGT-X(4WD)へと乗り換えたものの、いずれもいわゆる乗用車4WDであり、クロカン走行できないどころか、砂浜でスタックする始末でしたから。かといって、フィエスタにどこか不満があるわけでもなく、むしろ、スタッドレスタイヤから夏タイヤへと履き替えたところ、やっぱ、ヨーロッパフォードっていいよね、が、溢れてでていまして、手放す気にもなれません。つまりですね、やはり、理想は2台体制であることを痛感としまして、ならば、フィエスタはそのままに、またも軽自動車のジムニー(以下ジムニー)との2台持ちはどうだろうか。ついでに、シエラ1台になることが自分としては納得できるのだろうかを探るべく、久しぶりにジムニーシリーズに試乗することにしました。

 そもそも両車は、ボディやそのほかを共用としながら、シエラではワイドトレッド化とエンジン排気量アップ(NA)という大きな違いを与えていますが、そのアプローチは先代も現行型も変わっていません。そして、その分、シエラにはゆとり的フィーリングが演出されており、それがアドバンテージだと語ってきました。ところですね、現行型では別モデルを作ろうとしたかのような作り込みが見られます。分かりやすい表現をすると、先代までがジムニーを作ってから海外モデルたるシエラを作ったのに対して、今回は、シエラをグローバル戦略モデルに定めて開発し、ついでに軽自動車のジムニーも作ってみました、といった感じ。なので、完成度が高いこと、目指した走りが色濃く表現されているのは、シエラのほうであって、ジムニーには言い訳がたくさん見られます。もちろん、軽自動車という枠に収めばならず、この場合の言い訳は致し方ないと、捉えられますし、不満をいかに感じさせないかという仕立てが行われていますから、一概にウィークポイントと攻めたくなるのもちょっと違います。そうなんです、シエラのバランスが際立っているだけ、と、捉えてもらうといいかと思います。

 その美点、ひとつ目は、やはりエンジン。先代と比較するとジムニーはトルク変動が小さくなっていますし、そこに扱いやすさがプラスされていますし、もちろん、2速発進を可能としているエンジンの低速トルク+ギア比の継承など、アドバンテージはそのままにプラスに仕立てられていました。ただ、やはり、MTにおける扱いにくさはそのままで、具体的には、1速発進を行った後のつなぎに緊張を強いること。小排気量ターボゆえの宿命ともいえるもので、トルクが急激に立ち上がったところでシフトアップを余儀なくするため、快適なフィーリングを探るとエンジン回転数を意図的に引っ張ってからシフトアップする必要があります。つまり、アクセルペダルをあおりながら(エンジンを吹かしながら)シフトしていくんですが、クラッチミートが少々手前かつその範囲が小さいものですから、クラッチペダルを踏み込む左足の加減に難しさがあります。そんな旧態依然とした走らせ方に愉しさはあるんですが、そのフィールから、ジムニーを選ぶならATだな、なんてことも、散々に各誌(web)でお伝えしています。特に、今回のATはダイレクト感が増しており、先代のように前に進んでいる感が薄いフィール(トルコン滑りともいう)が抑えられていることも、その理由のひとつとなっています。

 では、シエラはどうかといいますと、エンジンがですね、印象的なんです。これは個性的とはちょっと違う、不足を感じさせないという意。排気量アップによるゆとりはフラットなトルクフィールを作りあげており、どの回転域でも扱いやすい。その上で、中回転域のトルクをマシマシしていまして、それもあってその後につなぐ高回転域での頭打ちを強く感じさせない。そうなんですね、これ、ヨーロッパブランドのモデルに搭載されている実用性重視なNAエンジンのフィーリングそのもの。パワースペックは大したことないのに、実用性と愉しさをバランスさせている、あのテイストです。そこに、MTのカッチリとしたストロークフィール、クラッチミート位置もちょうどいい塩梅であり、ここでも実用性と愉しさを上手くバランスさせています。まぁ、決定的に異なるのは、シエラでは2速発進が難しいことですが、ジムニーとは違いますからね。走らせ方が。

 で、シャシー。ジムニーでは、制限されたトレッド幅(ボディサイズ含)とタイヤサイズから、オンロードのコーナリングで不安を感じさせない塩梅に止めていることが印象的であり、これは先代も同様。ただ、突然に規制されるフィーリングはだいぶ薄れており、また、その加減が、フレーム強度アップも手伝って明確になったため、唐突とか、突然といった印象はかなり薄れています。ボール・ナット式ステアリングによるハンドリングの曖昧さはあいかわらずですが、これはオフロードを走破するためにあえて設計されたフィーリングであって、マイナスと謳ってはいけないところ。個人的には、このフィーリングに対して、はじめてジムニーに乗る方が何か違うと感じてしまわないかと思うのですが、どこのディーラーで訊いても、そういった不足を言葉にするオーナーはいないと言います。ただ、現行型を購入した、知人(農学部を出て、軽トラにも乗り慣れているはずの同い年)は違っていました。それまでゴルフに乗っていたからでしょうかね、そのいい加減さをマイナスとして指摘し、直進安定性に欠けることを指摘していました。それが、フツーな感覚だと思うのですが。

 一方のシエラは、そのあたりの不足が、すべてクリアになっています、というぐらいにバランスに長けています。もちろん、コーナリングではロールします、というよりも、させています。が、やはりオンロードにおける不満を導き出さないようにと量を制限する一方で、ジムニーよりも2サイズとはいえ幅広なタイヤサイズと、ワイドトレッド化によって、タイヤのグリップが明確になっており、そこには安心感とアクセルペダルをまだまだ踏んで行ける誘いが存在しています。そうなんです、吉田がいうところのシャシーが速いってやつですな。そういうシーンでは、エンジンのトルクフィールも大切でして……、って、いうまでもなく、中回転域のトルクが豊かですから、走らせるのがひたすらに愉しい、という境地へと陥ります。ヨーロッパブランドのコンパクトモデルのベーシックなグレードに見られる「あれ」があるんです。それにしても、スズキなのに、どうしてこんなにヨーロッパテイストを採り入れているんだ? と思われるかもしれませんが、実は、スズキのヨーロッパ戦略モデルの仕立てと同じといえば、イメージできるでしょうかね。そう、かつてのスプラッシュであり、バレーノの味付けなんですね。ということで、シエラのバランスの良さ、そして、これならば1台でも、ワインディングを愉しく走れそうなことから、シエラ1台を決意したのでした。って、まだ、商談していませんし、当分するつもりもありませんが。いや、でも、フィエスタからも去りがたい……。

 なんか、もうちっと書きたいことはあったのですが、長くなってきたなぁ。そうそう、シエラにするんだったら、やっぱり5ドアにするのか? って話もしようと思っていたのですが、その件は、別にしましょうかね。狙ったように4mを切ってきた全長とか、エスクード3ドアから5ドアへ展開した時の話とかの話も含めて。

このブログの人気の投稿

#1297 イチオシに変わりなかった、ルノー ルーテシア ゼン MT。

#1113 5年目にして……、トラブルではなかった、後付けサンルーフのあれこれ。

#575 燃費を期待できる2シリンダーモード、でもね、というゴルフ7。