#1739 頑固なスタンスはあいかわらず。でも、それが、このクルマの商品価値となっています。ってな、トヨタ・ランドクルーザー300系な話。
さて、いまさらのランドクルーザー300系のインプレッションです。試乗会にも参加せず、原稿依頼も来ずだったので、デビューから1年以上まったく触れていませんでした。ただまぁ、先代となる200系といいましょうか、100系、いや、80系、いやいや、60系から眺めてきた者(40系は試乗もたくさんしているけど、何か語れるまでの覚えがない)としては、また、200系で、さんざんに開発者インタビューをした者として、そして、その話を受けて未来を妄想していた者としては、あの乗り味は、予測の範囲だったとも言えます。もちろん、それは良い意味でのことですし、驚かされた部分もたくさんあります。
ステーションワゴン系のランクルは、乗用車のプラットフォームをベースにした高級カテゴリーのモデルと横並びに比較されてしまうようですが、ランクルは、オフ走破性あってのモデルですので、この最新モデルとて、オンロードにおける乗り心地がいいとは表現できません。いくらお上品に仕立てようとも、リアにリジッドサスを採用し、かつ大径サイズのタイヤを押さえ付けられませんし、つまり、とうてい彼らには追いつけません。
では、どこに価値があるのか、価値を見出せばいいのか、ってことになりますが、これこそ、比較すべきは先代であり、歴代モデル。残念ながら、ライバルと呼べるモデルは、今、存在していません。かつては好敵手がいたんですけどね。そういう観点で眺めると、いやー、すごいね、という価値をたくさん見出せます。まず、ボディサイズを大きく変えなかったこと、そして、ホイールベースを80系から変わっていない2850mmにしてきたこと。実は、オフロード走破性を語る上で重要となるのは、このサイズ感。とはいえ、すでに、もう、十分に大きくなりすぎているんですが、このカテゴリーは走破性だけではなく、人を運び、荷物を運びという役割があるので、もはや、このサイズのことを大きいとは言えない面もあります。日本で生まれたかもしれないけど、いまや活躍の場はグローバルですから。いわゆる、アメリカンフルサイズに到達していますが、それを超えようとしなかった。ホイールベースについては、走破性を狙うには短いに越したことはないんですが、先の居住性、もしくはオンロードでの走りを考えると、もう少し伸ばしたかったでしょう。でも、それをしなかった。固くなな部分であり、イマドキに迎合しなかったスタイルは、ひとことで、頑固ともいえるもの。ただ、頑固であろうと、そこに理由があるからいいんです、そういう頑固さは商品価値になりますし、何よりもユーザーが求めている性能そのものなのですから。
試乗したのは、オフロード走破性を特化させたGR SPORTで、アッパークラス感を室内にも表現していましたが、個人的には、そこに高級感を見出せませんでした。もちろん、造形、テクスチャー含めて、質感は大きく上げられていました。そして、機能性もね。ただ、そこにあったのは、GR SPORTに表現されていたのは特別感であって、あれは高級感とは違うな、と感じました。ほか、室内で印象に残ったのはシートの作りでしょうか。オフロードを走る際って、体を思いっきり揺すられます。乗員はその揺れにあまり逆らっちゃいけません、とはいっても、揺すられまくるわけにもいきませんから、ある程度のサポートがシートに必要となります。そう、体をホールドしながら、動ける代(しろ)がある形状のシート。で、300系のシートはちゃんとそれがデザインされていまして、なんといっても、ショルダーまでカバーするサイズとしていた上に、ショルダーそのものをサポートする形状(大きくはありませんけど)を加えていまして、これがすごくいい。そして、サイ、サイドともに、造形的にはたいした張り出しが見られませんが、これが絶妙な支えとなっていまして、なかなかいい。そう、その加減がいいんですね。
さて、走りの話。試乗したのは新開発となったディーゼルユニットですが、まぁ、ここまでやるかといった印象がありました。今回、排気量ダウンサイジングで、低回転域でのトルクがどこまで出ているのかなと思いきや、そこにはレスポンスとペダル操作のしやすさとがしっかりと作り込まれており、脱帽。ちょっとパワーが欲しいかなと踏み込めば、2000回転ぐらいでも姿を少しだけ見せていた極太トルクが立ち上がって、十二分のパワフルさを披露します。この2段構えのスタンスは、別モードが用意されているかのようでもあるんですが、それをアクセル踏み加減だけで「選択」できるところもすごくいい。これ、ドライブモードの切り替え以前のセレクトですな。で、乗り心地は、例のごとくサスペンションストロークを存分にいかしたゆったりタイプで、このあたりは、スポーツカー絶賛な方には不評なところ。いや、いいんです、それで。あえて、作り込んでいますから、それを。ただ、バネ下が重たいことと、リジッドサスによって、細かな振動が残っていますし、時折、大きな振動も伝えてきます。ところがですね、その乗り味、速度域を上げて行くと、いっきに表情を変えて行きます。そうなんですね、しなやかなサスを上手にコントロールしており、とんでもないフラット感が出てくるのです。ハンドリングは、そんあストローク感を生かしたもので、つまりは、ロール量はありますが、ただ、同じようにコントロールがよくできてて、特に、AVSを採用したGR SPORTでは、高速道路ICのRのきついコーナーあたりで、信じられないようなスタンス(動かない)を見せてくれます。あれは、びっくりした。
キャビンにおける静かさという面では、すこぶる静かです。でも、ウインドウを開けると、ディーゼルユニットからの燃焼音は大きく、少々耳障りな音域も含んでいました。ただ、窓を閉めると、キャビンへと、それが届かない。いやー、すごいな、と思いつつ、ランクルでも、ここまでする必要あったのだろうか、と想いつつ、あ、海外では、高速(オンロード)での移動が多いから必要か、と思ったりもしました。そうなんですね、国内専用モデルじゃないんです。この観点を忘れてはなりませぬ。
さて、そんなランドクルーザーに対する想いと、ふたりの開発者へのインタビュー記事は、そろそろ発売される(もうされた?)ランドクルーザーのムックに掲載されます。発売されましたら、また書き足します。