#1710 これからのベーシックとはどうあるべきかを作り込んでいた、スズキ・新型アルト。


 カングー・ディーゼル大絶賛な話の前編を書いておきながら、後編を公開しないのは、ちょっと理由があります。ちょっと待ってくださいね。この話題、とあるweb媒体向けに執筆していまして、あちらが公開されてから、残りをアップしますので。

 ということで、スズキから登場した新型アルトの話。結論から言ってしまいますとね、ターゲットが明確、言い換えると割り切りにも明確さがあり、好印象でした。そもそも、ゴテゴテコンセプト、ゴテゴテデザインやらのクルマは好みではないという前提もあるんですが……。で、まずは乗り込みで、感心。今回のアルトは、乗り降りのしやすさを狙って、開口部を大きく確保し、結果、室内高、全高(1525mm)ともにアップしています。これがですね、数値以上に効果が大きくてですね、いわゆるハイトワゴンタイプのような当たり前に手に入れた優れた乗降性とは異なり、期待と異なるとでもいいましょうか、え? 乗り込みやすい! 降りやすい とダイレクトに感じさせてくれるもの。ちなみに、シートのサイサポート部も小さく、さらにサイドシル幅も同様となっており、その乗降性を作り込んだ仕立てに気付くと、このアルトへさらに深く引き込まれていきます。ま、MTがなくなってしまった点は残念ですが。

 インテリアは、良くも悪くも造形物(ボックスやら)が少ないために、特に足下には心地悪いかのような空間だと感じましたが、やがて、すっきりしていていいなと感じると同時に、掃除しやすいな、とも思った次第。なんつーんですかね、フロアカーペットがなかった時代のヨンクかのようとは言いすぎですが、結果、あれがいちばん良かったんじゃない? と、そんなことも、個人的には思い起こしました。といっても、フットレストはしっかりと存在していますし、不足があるわけでもありませんので。

 走りは……、いいんじゃないでしょうか。あれやこれやは、軽乗用車なりではありますが、走り込んでいくうちに、これ、スタビライザーないっぽいなと感じて、あとで確かめてみると、やはりレス。個人的に、枠内に押し込められることが好きではなく、つまりはですね、クルマにおいては、スタビなしのほうが好みだったりするのですが、だからといって、アルトのシャシーが際限ないかのような動きを許されているわけでもなく、ある程度のところで止めているし、その過渡域がちゃんとしつけられており、好印象。つまりは、乗員に不安を感じさせることがない仕立てとなっています。パワーユニットは、マイルドハイブリッドでありながらアクセルを踏み込むとエンジンノイズが気になる点はほかのスズキの同ユニットを搭載したモデルと大きく変わっていませんが、静粛性が高いので、ベーシックモデルなのに……、と、違和感を覚えさせるところがありました。いや、美点なんですけどね。あとは、あれか、やっぱりモーター「アシスト」の扱いが的確になっており、700kg前後の車両重量のモデルにとっては十二分のパワーが与えられていたところも好印象。乗り心地はですね、ワゴンRスマイルよりも好印象で、特に乗り越え時の衝撃が小さく抑えられているし、同時にフラット感もあって、ちょっと驚きました。ちなみに、その直前には我が家のフィエスタに乗っていましたから、自ずとフィエスタと比較してただろうに、この、アルトに不足を感じなかったことは意外でした。

 さて、そのほかにも感心したところがありました。それが、スズキブランド国内初採用となったディスプレイオーディオ。ユニットとしては2つ用意されていまして、ひとつは上位グレードに組み合わせが許された7インチモニタ付き(周囲をリアルタイムで表示してくれるタイプ)、もう1つはリアバックカメラのみを備えたタイプ。ちなみに、価格は前者が11万2200円、後者が……、な、な、なんと5万5000円。国内メーカー純正で、この価格。いや、中国製なら1万円で買えてしまう組み合わせではありますけども。そう、これで十分というスタンスをお持ちの方には、ここまでいさぎよく割り切った装備の存在を知ってしまうと、きっと狂喜乱舞されることと思います。狂気はさておき、スゲーと発してくれると思います。ただですね、ジムニーではたしかラインナップされていなかったぞと確かめてみると、未採用。そうなんですね、いずれはスズキのモデルに広く展開されていくでしょうけど、今のところ、アルトのみの装備となっています。
 そうそう、スズキの最近のモデルに対してひとつだけ好きになれないところがあります。それが、デザイン。どこかで観たことあるデザイン。このアルトに対しては、当初オリジナリティがあるなぁと眺めていましたが、帰りにすれ違ったクルマを目にして、気付きましたよ、あれです、MINIクロスオーバーな雰囲気。バブル時代から00年代初めにかけてのスズキデザインは刺激だったのに、どうしちゃったのだろうか、と思いきや、やっぱりね、意図的なんだろうなと思うところがあります。それは、商売していくためには、売るためには、間違いとはいえない手法。そう考えると、初代エスクードのショートは、なんて美しかったのだろうか、とつくづく振り返ったりもします。ノマドじゃなくって、3ドアね。

 そのほかにもあれこれ感じたところはあるんですが、このあとインタビューとしてまとめますので、また、そのうちに書き足していきます。

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