#1672 軽乗用車たる普遍的価値に優れている、ダイハツ・タフト。

 

 さてと、タフトです。ダイハツのタフト。かつてのタフトを知っている者からすると、ここまで血筋を引いていないことに違和感どころか何も感じなかったりするわけですが、まぁ、かつての名を用いるならば、ラガーのほうが良かったのではないか、もしくは、このモデルをロッキーにして、あのAセグモデルのほうをタフトにしたら良かったのではないか、などと思ったりします。というわけで、軽乗用車として登場したタフトの話。ま、そういったイメージ戦略はさておきですね、クルマは良かった。いわゆるDNGA第3弾モデルになるわけですが、このプラットフォームコンセプトの狙いが誰しもわかりやすいレベルとなって表現されていた、そんな印象があります。つまり、素性がいい。かといって軽乗用車を超えたと断言できるほどのレベルには届いておらず、再スタート時の速度に違和感を覚えなくなったとはいえセルモーターの始動音にやはり……、を感じますし、ハンドリングにおいてはオンセンターの曖昧さや操舵時の過渡域の緩さに、そうだよな……、を覚えます。ただですね、乗り心地の面ではなんだかんだストローク量にもっとを求めてしまうものの、不快感を拭い去っているテイストはいいのではないかと。まぁ、タイヤサイズも起因しているとは思いますが。と、まぁ、ヨシダ的にかなり好印象だったりします。つまり、ここまでで買ってもいいんじゃない、と勧められるモデルとなるわけですが、買ったほうがいいと思える理由が、走り以外に多く見られます。それも含めて、このモデルは買い! だと感じました。
 まず、なんといっても、全グレードに標準装備してしまったスカイフィールトップ。そもそも国産車におけるガラスルーフの設えは数少なくなっていましたが、軽乗用車では久しぶりのことではないでしょうか、というほどの採用であり、新鮮さ。やっぱりね、アウトドア的イメージというのはアウトドアそのものって、つまり開放感やらにあるわけで、それをダイレクトに表現しているスタイルは、評価という枠を超えて、個人的に大歓迎。ちなみに、採用について開発者に訊いたところ、社内では賛成派だけではなかったとか。だからこその、この採用は大胆であり、なんだかんだで大英断であって、そのスタンスが天晴れそのものと高く評価しています。この後、ガラスルーフなしモデルが追加されるのかは分かりませんが、いずれにしても標準化したことで話題性はすこぶる高まり、しかもですね、このガラスルーフ、サイズがですね、ルーフ幅ギリギリまで攻めていまして、それにも拍手喝采。個人的にはリアシート(縦)方向へともう少し伸ばして欲しかったなという想いがありますが、ま、そこまでするとね、販価がね、跳ね上がっちゃうからね、と、考えると、これで十二分だったのだと思います。
 もうひとつは、ま、このモデルだからというわけではなくタイミングもあってのことでしょうけど、ディスプレイオーディオをリーズナブルな価格で設定し、そこにパノラマビューといったモニタ表示を用いた機能をやはりリーズナブルに組み合わせ可能としたAVユニットを仕立てたこと。なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、たとえば、これ、うちの実家における購入シュミレーションをすると、もっとも理想的なスタイルとなります。ま、購入するのは高齢者なわけですが、それゆえにクルマの使い方は病院だったり買い物だったり近距離かつ、よく知るところがほとんど。で、そんな彼らが欲しいというアイテムが、表示モニタを活用した周囲を見渡せるシステム、特に真上から見下ろした景色を表示してくれるパノラマビュー。高齢者じゃなくても欲しいですよね、この機能。しかも、昨今はコストダウンが進んで、手に届く価格帯に入ってきている。
 ところがですね、これまでのモデル(軽乗用車以外)でこれを実現するためには、それに対応した高価なナビゲーションを購入するという前提条件がそこにありました。まぁ、システム的には表示部を共用するわけですし、いわゆるバックカメラといったハードウェアも、ナビシステムの一員として構成されてきましたから、そういう仕立てについて理解できないわけではありません。しかしですね、ナビゲーションシステムに対してのリクエストは、高齢者でもスマートフォンが普及した今、また、昨今の高齢者のドライビング環境を考えると、表現は雑ですが、不要と感じている人が少なくありません。そう捉えると、これまでの、高級ナビを買わねば、パノラマビューをプラスできないというスタイルは、今に合っていない。合っていないし、クルマにおけるセンタークラスター部に備えられたモニタの役割は、この先を考えると、ナビゲーションシステムをメインとした考え方から脱しなければならないところにあると感じています。
 ですから、そのあたりのシステムを自動車メーカーが開発するというスタイル(コストが大きく掛かる)のではなく、時代変化が速いパートでもありますから、スマートフォンのOSをベースに頼ってしまったほうがいいのではないか、そう思い続けていましたし、幾度も開発の方に訴えてきました。ただ、それを実現できなかったのには、大人の事情から。国産モデルの場合、ナビゲーションのほとんどはディーラーオプションとして設定され、それがディーラーの稼ぎになっていたわけですから。つまり、これを崩すためには、ディーラーの収益構造を変えなきゃいけない。
 でもですね、よくよく考えてみると、それってユーザーフレンドリーではないわけです、全く。ところが、トヨタ(グループ)は、そのあたりに大鉈を振るって改革を進めており、昨今のトヨタ車、そしてダイハツのモデルで、こうしてディスプレイオーディオをスタンダードに添えるというスタンスを提案しています。ダイハツとしては、その第一号がこのタフトとなったわけですな。つまり、タフトには、クロスオーバーモデルという付加価値があるだけではなく、それを上回りそうな魅力が多くあるのです。結果、ユーザーにとってはアイテムによって満足感が高くなるだけでなく、そこにあるリーズナブル感によって、さらなるCSは高くなるわけです。これって、価格が高くなったとレッテルを貼られている軽乗用車にとっては、とんでもないアドバンテージとなっていますし、ほかブランドが早々に追従することはできない魅力になっています。
  と、褒めまくりのタフトですが、もうひとつ、美点があります。昨今の軽乗用車はリアシートにおける足下広さをひとつのウリとしており、そのためにスライドレールを採用し、シート位置を自在に変えられることを謳います。謳うんですが、どのモデルも、シートをスライドさせてしまうとシートベルトを理想の位置にすることができない。簡単にいえば、シートを位置を動かすことで肩にしっかりとかけなければならないベルトが、肩から浮いてしまうといった状況が生まれてしまっています。そもそも、昨今の軽乗用車のリアシート位置そのものに不安は残っていますが、それはさておき、タフトでは、リアシートが前後スライドしないためシートベルトが理想の位置に止められている。世間ではリアシートがスライドしないことに対してマイナス意見が飛び交ってしまうんでしょうけど、安全性を考えるととても大事なポイントとなっています。
 さて、まとめを。結局のところ何が言いたいかといいますとね、このモデル、クロスオーバーとして特別なようで、実は軽乗用車に求められる普遍的価値をすこぶる備えておりまして、乗降性やアイポイントの高さを含めて、実はクロスオーバーモデルではなく、日常の足としても十二分に期待できる魅力をそなえています。その価格も含めてね。というわけで、売れるでしょう、と思ったらば、爆売のようですな。深いインプレッションは別の機会に。

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