#1655 歴代レガシィに試乗して感じた、レヴォーグに引き継がれたもの。
歴代のスバル・レガシィ、といっても最新世代のひとつ前となる5世代目までに乗る機会がありました。レガシィといえば、三栄書房のクラブレガシィであれやこれやと携わり、これやそれやと取材し、ああでもないこうでもないと執筆の機会をいただいてきました。そもそも、レガシィとの付き合いは長く……、といっても、購入したことはないんですが、初代のRSを知人が購入してスキーに出掛けたり、やはり初代ツーリングワゴンを所有していた知人とともにあちこち出掛けたり。2世代目は後期モデルのプレス向け事前撮影会でそのポテンシャルに感激して、見積もりを取るまでに至り……。直接的な付き合いにはならずともなんだかんだと付き合いの長いモデルです。
で、5世代目までに乗ったという話。やっぱり乗り比べてみるとですね、それぞれの世代に味があり、キャラクターがあり、とてもいい。それは何か。ま、簡単にいえば、速いだけではなく、ドライビングにゆったりとした気分を愉しませてくれる、そんなグランドツーリング性能ですな。スポーティという言葉で限ってしまうそれとは異なる、その先にある、どこまでも走って行きたくなる衝動とでもいいましょうか、ま、そんな感じ。
ただまぁ、今回の試乗において用意されたモデルは、1世代ごとに1モデル。パワーユニットもターボだけではなく、NAもあって、横並び比較にはできませんでした。できませんでしたけどね、それぞれに個性があって、当時の考え方があって、とてもおもしろかった。個人的にいちばん、いや、同着いちばんかな、とばかりに印象に残ったのは、まずは、写真にある初代のツーリングワゴンGT TypeS2(左)。ボディ剛性やらサスフィールやらステアフィールやら、全てが過去なんですが、路面トレース性とハンドリングのバランスが絶妙。路面を捉えて離さないといったフィールは格別であり、それが直進性を導き、いざ、コーナーともなれば穏やかなロールとともに踏ん張るスタンスを作り上げ、コーナリング中なのにボディをどっしと構えたままに、サスペンションだけ動かして、駆け抜けていってしまう。高速走行では、先のトレース性そのままに速度を上げていくとボディはフラット感を増していくという、なんともかんともな美な仕立て。これ、偶然ではなく、仕組まれた仕立て。専用とされたスポーツサスペンションがですね、実に美味といった感じ。
個人的に、この乗り味は、2世代目の後期モデルで登場したGT-Bのものだと思い込んでいたんですが、違った。懐かしいさを思い起こしながらGT-Bに乗ってみれば、ハンドリングにシャープさは生まれているんですが、日常域で、思いのほかサスペンションが動いておらず、ちょっと違った。ターボのフィーリング? 初代はATとの組み合わせもありますが、アクセルペダルを強く踏み込まない限り、大排気量的なフィーリングを意図的に演出していまして、これにもうっとり。ついでに、2、3世代目のシーケンシャルターボもですね、あの頃、あれほどに谷間の存在にマイナスを訴えていましたが、あらためて試乗してみると、アクセルを踏み込まなきゃいいだけのこと。谷間の存在を意識しながらアクセル踏み込み加減をちょちょいと変えてやることで、初代以上の大排気量感が現れます。
そうなんですね、ターボエンジンを搭載したモデルゆえに、当時は、ドライバーの意図をついつい叩きつける操縦にいかに応えるかに期待したものですが、実は、レガシィの乗り味を上手く引き出すことにポイントがありました。そうすることで対話が生まれ、愉しさが引き出される、そんなモデルだったんですな。
って、散々執筆しながら過去形でどうするって感じですが、振り返ってみると、あらためてそれを強く感じます。ちなみに、もう1台の同着トップは3世代目後期の250S。2.5LNAエンジンは、ターボに必要とされるエンジンフィールを上手く引き出すテクニックは不要であり、なんつーんですかね、誰もがそのままに大排気量たるゆとりを愉しめるフィーリング。サスペンションも、この後のモデルからハンドリングがさらに最優先され、引き締められていく前のフィーリング、つまり、ゆったりを感じさせるストローク感が存分に備わっており、それが高速、ワインディングともにトレース性能にも大きくプラス。初代よりも2世代分のボディやらの進化もあって、とてもいい。実は3世代目もやはり見積もりを取っているんですが、当時は購入しなくても良かったかなと思っていたところもありました。しかし、振り返ると、今の自分にとっても見合うフィーリングで、これもまた、比較試乗をしての、新たな発見となりました。そう考えると、あの時に、さらに最高を感じたS401って、やっぱり買っておくべきだと、こちらは少しの後悔もあったりします。
ま、そんなこんなのレガシィのグランドツーリング性能は、現行型レヴォーグに引き継がれています。とは、スバルも自動車評論家の方々も言葉にしますが、僕は、レガシィ人気を牽引してきたスポーティな性能はそのままに引き継いだものの、NAエンジンがもたらすゆったり感やらは、置き去ってきたと感じています。でも、それが悪いことだとは思いません。移り行く時代、置き去るモノがあって当然のことですから。ただ、ただですね、個人的にはとっても寂しさを感じます。青春でしたから、レガシィの変遷って。
そうそう、今回の取材、GTの系譜として、今発売の八重洲出版・ドライバーに執筆していますし、同・Youtubeチャンネルにその取材の様子がアップされています。実は動画撮影っていつも(ドライバーでの撮影以外)NG連発しているんですが、今回は違ってですね、すごいんですよ、言葉のいい間違えを抜いてもらった以外にNGなし。どうしてそうなったか……、って話については、また後日に。