#1632 またひとつ、想い出が消えました、という話:横浜西口のダイエー編。

 年齢を重ねるとはこういうことなのか、と、突き付けられることがあれこれとあります、最近。そりゃそうです、半世紀も生きてきたわけですから。と、そんなことのひとつに、横浜駅西口にあったダイエーの完全閉店がありました。本日のことです。たぶん、すでにどこかに書いていると思うのですが、幼少期を横浜駅の近くで過ごしました。というより、育ちました。自宅から横浜駅までの距離は遠くはなかったと記憶していましたが、今の便利なマップアプリケーションで調べると約1.5km。自宅からは私鉄も京急と相鉄の最寄り駅がさらに近い距離にあり、国道には横浜市営バスが往来する、そんな地に住んでいました。ただ、そこには、一般に妄想されているような、ぎらぎらとした横浜感はなく、ふり返ると、下町風情が流れていた地域でもありました。だから、いまだに好きなのですが。
 で、そんな横浜の想い出で欠かせない場所が、横浜西口のダイエーでした。本館と新館とからで構成されていましたが、自分の用があるのは釣り具屋さんがあった新館のほう。あとは、本館と新館のあいだにあるドムドムバーガーと、ディッパーダン……、と書きつつ、あれ、あったっけか? いや、あった、チョコチップが入ったアイスが好きだった記憶がありますから。おもちゃ売り場ではゲームをして、ペット売り場(あったと記憶しているが、かなり薄い)なんて、シースルーなエレベーターに乗ることが愉しかった三越(なんと三越にもペット売り場があった)とをはしごしてカブトムシの価格を比較したりと、少年吉田を語るには欠かせないスポットでした。
 そんなこともあって閉店となる本日、すぐれない体調を少々無理して、出掛けてきました。店内に入るのは、それこそ40年近くぶりではないでしょうか。まぁ、釣り具店やらの配置や、できごとはわりと明確に覚えているんですが、釣り具店がある4階(たぶん)までは、少々無理に接続した本館と新館の中をどういう経路を辿ってたどり着いたかなどは、すっかりと忘れていました。が、不思議なものですね、ダイエーの入り口に着いた瞬間にふっと道筋を思い出し、階段やエスカレーターを目にした途端に、当時の風景がドンと思い浮かんできました。中でも新館にある微妙な弧を描いた階段(写真右)は、目にして、思い出して、感激して、崩れ落ちそうになってしまったシーンのひとつ。当時、このデザインに何かを感じていましたが、いまの視点で眺めると、階段右側には機能的とは思えぬスペースがあり、ムダを意図的にデザインしていたことを発見し、それはそれでまた感激、と。ま、完全なる螺旋スタイルにしなかったのは、それこそスペース的な理由があってのことでしょう。ただね、理想をなんとか具現化しようとする、そのスタンスが、とってもいい。
 そんな観点で店内を歩き眺めていると、本館2階から1階へと繋がる階段にも何かを思い出しました(写真左)。これだけ幅が確保され、ダイエーたるメインフロア(1階の食料品売り場)へと左右に分かれる階段という構成そのものは、天井を高く見せつつ、移動もしやすいという、なんともまぁモダンなもの。ま、ホテル的といいましょうか、当時は、この階段にも憧れといいますか、アッパークラス(!)を感じていました。って、やはり書きながら思ったんですが、この階段あったっけか……。いや、あった、……、はず。
 写真右の駐車場への入り口は、はっきりと覚えているシーンです。当時、駐車場は地下と立体とがありましたが、今日はどっちへ誘導されることになるか、ワクワクドキドキしていた覚えがあります。どっちを利用したかったか、は、記憶も曖昧ですが、立体駐車場のあの特別感にドキドキがあったような想いがどこかにあるような、ないような。ほら、クルマが出てくるまでベンチに座って待つあの感じ、ターンテーブルの存在含めて……、って書きながら、立体駐車場も地下駐車場も本当にあったっけか? ワクワクドキドキも感じていたっけか? と確信が持てなくなってきました。まぁ、記憶ってのは、思い出しては書き重ねて、記憶されていくものらしいんですが、ここで、なんかかなりの妄想とともに新たな記憶となった気もしています。さきほどの階段の件含めて、……。
 何も買わずに店内を後にしました(これだけのために足を運んだ)が、途中、店内で、利用者からのありがとう! 張り紙があるところ(写真右)で、ングッと突然に込み上げてくる感情があり、涙がこぼれ落ちそうになりました。皆さんのコメントを読んでみましたが、同じなんですね。皆、何かしら、ここに想い出があるんですね。それにしても、日本はどうしてやたらと建て変えてしまうんでしょうね。そう、引き継ぐことすらできないわけですから、そこに人が交叉し紡ぐなんてことは、つまり、残すなんてことは、到底無理。そういう価値観がない、モノの見方ができない、だけのこと、と言ってしまうのはとても寂しいことなんですが。
 というわけで、どうもありがとう、横浜西口のダイエー、という話でした。

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