#1622 三栄書房の新型/歴代ジムニーのすべて、製作の裏話、あれやこれや。

 さて、ジムニーネタを。実は、意図して触れずにいました、書かずにいました。なぜならば、ジムニーに関する執筆が多かったこと、そして、取材以外でしっかりと乗り込む機会がなかったことなど、理由はあれこれとあります。で、ようやく、最後の執筆が終了したので、取材の裏話含めて、あれこれと書いてみようかと思います。
 まずは、最近、執筆を終えた三栄書房の新型/歴代ジムニーのすべて、について。担当した編集部はカースタイリングを製作している部署なんですが、同時に、いわゆるアーカイブシリーズも製作しています。その内容は簡単にいえば、三栄書房の過去の財産(資料や写真や)をもとにして、今に焼き直したものなんですが、そこに今と、懐かしい過去を上手くバランスさせていて、しっかりと再編集しています。そう、どこかのようなコピペ作業とは違う、作り込みに惚れ惚れとしています、いつも。まぁ、そういうスタンスの編集部ですから、そこにいる方々も、そこに集う方々も、話していて愉しさがあります。好き嫌いの向こう側にあるクルマの捉え方も合いますし、本の作り方に関しても意見がとても合う。つまりですね、仕事していて愉しさがあります。今、ほっとんどないんですよ、こういう本の作り方。寂しい限り。ほんとに。
 前置きが長くなりました。そんな編集部が製作したこの本ですが、実は、この編集部、すごくヨンクに詳しい人が集まっているわけではありません。ただ、編集部員のひとりが、今年の初めころ、先代ジムニーシエラを生産中止寸前に購入。シンプルなクルマを好む彼は、新型ジムニー登場で、シンプルさをもったクルマが消え往くことを知り、あえて、旧型を選択。つまり、オフロード走破性にはあまり興味がなかった様子ですが、ジムニー(シエラ)の本質でもあるシンプルさとは、実は走るシーン関係なく愉しめるもの。そういった視点から、また、これまで乗用車に乗ってきた観点から、ジムニーシエラを購入し、ジムニーライフを愉しんでいるようです。で、さすがだなと思うのは、そのスタンスをベースにして、本を作り上げたことでしょうかね。もちろん、ジムニーを知っている身から話はとことんしていますが、その会話とて、知らぬから知りたい、でも、自分なりに感じたことはストレートに伝えるというもので、やりとりに愉しさがありました。そして、そんなスタンスが、この本を濃い内容へと導いたな、なんてことも感じました。あれ、なんか、個人称賛な内容になってきた。
 この本の見どころは数多くありますが、そもそもスズキの広告すら入っておらず、ほか、広告もなく、いわゆるデモカー本にもなっていません。そんな実直な作りゆえに、束は厚くはありません。むしろ、薄いです。でも、内容は濃いです。それは、企画とて、テーマを決めて、しっかりと取材しているから。ということで、巻頭は、新型vs旧型比較を、時間と手間とコストを掛けて、ジムニーはもちろん、ジムニーシエラでも行っています。そう、ただのプレスインフォメーションをコピペしたような、いい加減な本にはなっていません。もちろん、そこに流れるインプレッションや、結論は、万人向けではないかもしれません。しかし、そこにはちゃんと筆者の意見があり、見方が表現されています。広告が入っていないことからもお分かりのとおり、表現に気を遣いながらも、しっかりと言い切っています。たとえ、悪しであっても、なぜそう感じたのかをはっきりと述べているので、そこには爽快があります(と思う)。
 個人的には、知っているつもりになっていた新型ジムニーシリーズに対して、実際に取材で比較しながら、見比べながら、乗り比べたら、印象が異なった部分もありましたし、より深くを発見したことも多くありました。そういう取材あっての執筆でしたので難産になるかなと思いきや、逆に思い入れが強過ぎて、書きたいことが多すぎて、指定されていた文字数を大幅にオーバーしてしまったほど。たとえば、新旧ジムニーのところでは、昨今の自動車雑誌に掲載されている、オフロード走破性を示す素材として、モーグル地形で短足ぶりを披露している写真に対して、それは違うんだと言いたいがためにそもそも、リジッドサスとは……、なんて、話を含めてしまうし、台形ホイールアーチの真意とはなんぞやを語りはじめるし、読み返してみると、収拾付かずの文章に唖然としていたりするのも、また、事実です。
 あれ、長くなってきた。えっとですね、この本の中で、凄くいい企画になったなと思ったのが、そのシエラを購入した編集部の山口さんとの対談企画でした。電話打ち合わせの時、お互いにジムニーに対する想いを語っているうちに(この人との電話は互いに白熱していつも長くなる)、これ、そのまま、対談にしたら、おもしろいんじゃない? と発案。……、そしたら、本当に企画になりましてね。まぁ、実際に対談しなくても、ジムニーに対する言葉は散々に発していますので、それを拾って対談風に仕立ててもらえばいいかなと思っていたんですが、忙しい取材の合間、取材が終わった後の、とある高速道路サービスエリアのフードコートにて対談をちゃんと行いました。といっても、普段からの雑談の延長そのものといった感じで、気が付けば、4時間(だったそうな)も話していたとか。これ、テープ起こしするのたいへんだから……、と思ったものの、すべて書き起こしたそうで、掲載された文言はまさに会話そのものとなっていました。もう少し整えているのかと思いましたが、読み込んでみたら、言葉遣いに雰囲気が出ていますし、ほかが、マジメな企画が多いので、こうした箸休め的な企画があることで、本としての価値がすごく高まったような気がします。そもそも、ジムニーシエラユーザーになって、まだ1年経たない編集者と、仕事で、プライベートでジムニーに携わってきたライターという立場からして、オモシロイですからね。
 ということで、仕事を終えての充実感はとても高く、この機会を与えてくれた方々に、ひたすらに感謝なのでした。特に、編集部を紹介してくれた、大先輩であり、自動車ジャーナリストとして憧れの人である、星島 浩さんには、大感謝なのでした。
 そうだそうだ、今回、表紙に自分のクルマが載りました。これだけ、自動車雑誌に携わってきて初めてのことです。これはこれで、うれしいもんですね。

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