#1612 パブリックβ版にクレームはどうかと思うのです、という話。
新車話からちょっと離れて、昨今のあれこれ感じたことを。自己責任話なんてたいそうなテーマを掲げると、それこそたいそうな話になりますが、ま、捉え方次第、といった感じの話を。Appleに限らずですが、最近、次期OSのβ版を一般ユーザー向けにも利用してもらいバグ出しをしてもらうという、皆にメリットがあるというスタイルをあちこちで見かけます。この場合は、言い方を変えると、先行して次期OSに触れる機会をエサに、バグ出しを手伝わせるという、一見ボランティア活動ですな。ま、これを昨今の、エサを明確にしていていないようなボランティア募集に重ねると、ちょっと違うような気がしますが、そんなあれこれ。
で、Appleでは、MacOSとiOSにおいて、次期OSをパブリックベータ版として公開しています。そもそもアプリケーションやらの開発者向けに先行リリースされていたバージョンを、一拍置いてつまり少し安定させてから一般に公開しています。ところが、このパブリックβ版に対して、知り合いがですね、なんと、AppleCare相手にバンバンに使えないと電話していまして。その内容たるやクレーム状態で、バク出しとはほど遠い内容。ま、それなのにちゃんとクレームに応対してしまう、AppleCareもどうなのさと思いますが……。そもそも、パブリックβ版をたんなるOSのバージョンアップと捉えている時点で、それ違うさね、を感じます。たとえば、すでに予告された実装されるはずの機能であっても外されていたり、新しく実装された機能にしても、これまであった機能にしてもそれこそβ版以下、トラブルを引き起こしかねない可能性を秘めていたりします。そういうものなので、そこに対して、クレームを発することは、違う、と。しかも、その内容が、クラウド上のデータがリンクしないとか、そんなレベルですのでなおさらに。そんなのバージョンが変われば可能になったりするんだから、クレーム付けるもんじゃないと説明するんですが、なかなか分かってもらえず。
で、iOSやMacOS側のトラブルならまだしも、そこにサードパーティ製のハードウェアやドライバなんかが絡んでくると、なおさらのこと。実は、今回、というか、今年の初めから、サードパーティ絡みでトラブルに見舞われています。USB経由でディスプレイ表示を行うデバイスがあるんですが、外部ディスプレイに対してもAirPlay経由させて、そのあたりを統一したようで、つまりは、仕様が変わったために、裏技とも言えるUSB経由でのディスプレイ表示ができなくなりました。なりましたが、まぁ、OSの仕様が変わったわけですから、致し方ない。致し方ないことなんですが、そのデバイスを利用者している人たちのフォーラムを眺めていると、その開発メーカーに対して文句を発している人の多いこと、多いこと。まぁ、最終的には、GM版にまでそのトラブルの影響が及んだこともありますが、β版利用者にとっては、それこそバグを報告すべき、いわゆる人柱案件であるはず。トラブルがある可能性を承知してβ版を利用しているはずなのに、ね。理由を説明している、トラブルの可能性を最初に言っているはずなのに、自らを押し付けてしまう、というおかしなスタンスが見られます。
なんて話をしはじめると、これ、クルマにも通じるところがあります。たとえば「走らない」というぶっきらぼうな発言。この場合のすべてを否定するかのような表現の場合、パワーがない、を意味します。ま、そもそも、パワーってのは、絶対的な感じ方だけではなく、走らせ方によっても感じ方が違うもの。もちろん、自らの基準によっても違うし、求めている走りによっても違うもの。まぁ、そんな発言に接するたびに、この人、どうしてそんな表現をするんだろうと詮索してみると、わりと、自らの理想を押し付けているだけといった共通があります。結局ですね、その勘違いは、パワーがないのではなく、アクセルペダルの踏み込み方に集約されたりするもの。今乗っているクルマの感覚よりもパワーがあると思わせるには、踏み込み量の少ないところでパワー(トルク)を立ち上げておけばいいだけのこと。そうするだけで、よく走るという、これも安易な表現を得ることができます。これ、ディーラーの試乗では分かりやすさになりますが、そうやってクルマを開発していくと、どんどん乗り難いクルマになっていってしまいます。
たとえば、トヨタ・エスティマ。って、良い例です。現行型は、3世代目となるモデルで、06年に登場しています。そうなんです、すでに12年が経過しています。しているんですが、って、フェードアウトさせるつもりが、細々とした人気から消し去ることができず、16年にフェイスリフトを含めたマイナーチェンジをしています。しているんですが、プラットフォームはそのままですから、あれこれは大きく変えられない。変えられないことは、時代の流れとに、差を感じさせるものですが、それは古さだけではなく、これ良かったよね、的な懐古(大げさ)を感じさせるところもあります。それが、アクセルペダルの踏み込み量とパワーの出し方(ブレーキペダルも)。多人数乗車を目的としたこの手のモデルにおけるパワーフィールは、絶対的なトルク量やパワー感よりも、加速フィールが優先されなければなりません。そう、唐突な加減速によって、乗員を不快に感じさせない、加速フィール。エスティマは、それをちゃんとターゲットとして仕立ててあります。踏み込み量が少ないところではじんわりとクルマを前進させ、踏み込むに連れて加速度を増していく。逆にいいますとね、ちょっと踏んだだけで、グッとは出ない。出ないんですが、その加減がとても良く、また、その加減速のコントロールをペダル操作だけで簡単にできるようになっています。ただ、グッとは出ないもんですから、それをもって走らないと評されてしまう恐れもあります。ま、ただ、踏み込めていないだけなんですけどね。
少し前のモデルには、こうしたペダル踏み込み量(有効なストローク量ともいうか)を大きく確保してあって、ブレーキペダルにしてもコントロールしやすいモデルが多くありました。ありましたが、フィットあたりからかな、ちょっと踏んだだけで、加速するフィールが流行となり、それに追い付け追い越せとばかりに、おかしなペダルフィーリングのモデルが多くなりました。もはや、あのころのフィールを大切に表現したブランドは少なくなりました。なりましたが、そういった意味からも、現行型エスティマは、希有な存在だったりします。
あれ、OSの話を書いていたのに、いつしか、クルマの話に……。