#1439 FF、でもテクニックをもってオフロードをそこそこ楽しめる、プジョー2008。

 ヨンク信者というわけではありませんが、オフロードを走るならばヨンクであることは絶対条件だと考えている者にとって、2WDモデルでオフロードを走るなんて、ちょっと無謀ではないか、そんな考えを持っていました。そう、過去形。なんとですね、フェイスリフトを行ったプジョー2008で、愛知県にあるさなげアドベンチャーフィールドを走るという試乗会があり、参加してきたらですね、これがですね、走った。そもそも2008は、165mmの最低地上高、フロントオーバーハングが長いことやらあれこれによるクリアランス不足からして、かなりの不安がありましたが、意外にも走った。そして果敢に。コースは、ミニバン(でも4WD)なら走れるという、難易度の最も低いワンダフルコースではありましたが、途中、片足ずつを浮かせながら登って行かねばならないセクションもあり、結論を言いますとね、2008、FFなのになかなかやるじゃん、そんなことを感じました。
 そもそもですね、オフロードといいましょうか、ラフロードを走れるモデルか否かを語る判断材料として、グリップを失いやすい路面の上り坂を登ることができるかが、あります。それは、タイヤがグリップを失った際、そこでタイヤを空転させるのを諦めてしまうか、否かにキーがあるんですが、諦めにしても、端から諦めるヤツもいますし、CVTを保護するからとばかりに控えめな諦めをするヤツもいます。そうなんですね、実は、4WDモデルであっても登れないモデルもありますし、FFモデルであっても登っていくモデルがあります。そして、2008は後者でした。GTラインに装備されたグリップコントロールと呼ばれるトラクションコントロール、つまりホイールスピン量を調整するシステムがキーでして、オフローダーで必要とされるタイヤを滑らせながらグリップしていくという正攻法でアタックしていきます。で、当初心配していた、ボディのヒットはライン次第とはいえ、なく、また、それほどの角度の斜面ではなく、砂利やマッドといったグリップを完全に見失ってしまうほどの路面でなければ、登っていってしまう。このグリップコントロールの意外ともいえる優秀ぶりに、ラリーで培ったトラクションのコントロール方法が息づいていることを感じました。
 とはいっても、FFであることに変わりはありませんから、上りで、フロントが完全にグリップを失ってしまうような、つまりはですね、フロントだけではなく、リアから自車を押し上げなければならないようなシーンでは、お手上げとなります。なりますけど、なるんですけど、そういうシーンではですね、手前から加速して適切な勢いを与えると登らせて、途中でグリップを失って速度が落ちるあたり、つまりはグリップコントロールが介入するタイミングまで見計らって、アクセルをコントロールし、タイヤを空転させながらグリップをジワジワと得ながら、そして、登っていく。そこには、アクセルコントロールという操作が実は必要になります。昨今の4WDモデルのハードなオフロード走破性を狙ったトラクションコントロールは、アクセルを戻さずにいることで、グリップ探り、そして得て、前進していきますが、2008の場合は、グリップ加減を感じながら、時にアクセル踏み、時に戻す操作が必要になります。なりますので、誰でも簡単にできるレベルとは言えないところがありますが、そんなテクニックを用いることで走らせることができます。ま、グリップ感を探りながら、アクセルペダルの踏み加減を調整するってのは、クルマをドライブするに基本的な操作であり、テクニックとまでは言えないのかもしれませんが。
 今回は2008の全高に満たないかなといった高さへと登るセクションがあったのですが、登るにパワーを与え、フロントが浮いたところでアクセルを加減しつつ、グリップコントロールによってクルマを前進させ、アクセルをきれいに抜いて、クルマをきれいに停める。そんなアクセルワークに対して、2008は、適度なトルク量で応えてくれますし、何よりも唐突なトルク変動が見当たらず、まさにコントロールのしやすさ、つまり扱いやすさがあり、それが楽しさに繋がっていました。ま、考えてみますとね、このアクセルコントロールのしやすさってのは、オフロード以前に、オンロードでも大切なことであり、サスペンションに限らず、優秀たるセッティングってのは、走るシーンを選ばないものなんだな、ということを感じました。2008では、サスペンションのストローク量は少ないものの、接地させた際の接地感の豊かさは、オフロードでも強く感じ取ることができ、それが先の操る楽しさにダイレクトに繋がっていましたしね。
 そこには忘れてしまったといいましょうか、こうだったよな的な楽しさがありました。対話性があるがゆえに、楽しめる操縦性ってやつですな。そして、オフロードランの楽しさってのは、オフロードのハードさを上げ、自車の走破レベルを上げることだけではなく、たとえ、高くなくても、十分に楽しめることを、改めて感じました。さらにはですね、SUVの価値ってのは、ユーティリティ性能や高いアイポイントだけではなく、走れるフィールドが広がることで、その楽しさは相乗的に広がりゆくものである、そんなことまで、再認識できた試乗会となりました。
 自動車雑誌的なインプレッションは、後日、4x4magazineに掲載されますので、そちらをご覧くださいまし。

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