#1427 昔のスバルから最新のスバルへと引き継がれたもの、……、云々。


さて、そんなスバル試乗会にあって、今回、最も印象深く、最も感激したモデルは、写真いちばん上のアルシオーネでした。路面からの豊かな情報がドライバーにダイレクトに伝わって来ます。クーペ、つまりラグジュアリィテイストを与えたモデルゆえに、そのあたりは曖昧にされているかと思いきや、スポーティさを消し去ることをしておらず、コストを掛けられた時代がゆえのアッパークラス感もあいまって、まさに質感を覚えさせるもの。アルシオーネに限らず、試乗前に構えていたのは、ハンドリングにあるだろう曖昧さであったり、ボディ剛性の不足でしたが、意外にもそれらを不満に思うことはなく、それどころか、それらがしっかりと作り込まれており、感心を覚えたほど。オーバーな表現を用いますとね、絶対的なポテンシャル(数値)は最新モデルのほうが上でしょうけど、フィーリングとしては最新のモデルよりも断然いい。簡潔な表現を用いますとね、対話性があふれている。



その対話性がいちばん色濃く存在していたのがアルシオーネだと感じたというわけです。もちろん、今回試乗した、レオーネクーペ(初代)、スバル1000、スバル360、そして、アルシオーネSVX、レオーネツーリングワゴン(スバルオリジナル最終)のいずれにも存在していました。そして、感じたのがレガシィ前と後でスバルたる乗り味に違いが生じていたことでした。それが先に書きました対話性でした。

今に通用するためには、高いに越したことない安全性、商品性に結びつく快適性などは、絶対的な命題であり、商品(クルマ)に織り込まなければならないことは承知しています。しかしですね、いくら最新のモデルがパノラマ感を謳うべく、あれこれと造形(デザイン)にこだわったと解説されても、かつてのモデルのように、抑えられたインパネ高とボンネットフードを見渡せるあの視界に勝るパノラマ感には勝てません。そうなんですね、パノラマ感たる本質が異なるから、致し方ない。そう、仕方ない、致し方ない。そうなんですな。


ただ、それは、すべてにおいて曖昧さに通じる緩さはトコトン突き詰めたことで得られたもの。つまりですね、かつてにあったクルマからのいい加減でもいいじゃんといわんばかりの語りかけはさらに薄められ、と、いいましょうか、ほとんど見当たらなくなっています。いかに路面を追従させるかに長けたシャシーは、正確さと生真面目さに長けており、かつてのようなストロークフィールで語りかけてくることは、もはやありません。あの頃を知っている者として、あの頃のフィーリングが好きな者として、なんとも言えない寂しさを感じました。ただですね、今、もし、クルマの楽しさを求めるならば、ハイスペックや極めることに何かを探るのではなく、かつてを振り返ってみることが、いちばんの近道であり、そこに多くのキーがあるように感じました。はい。
と、長くなりましたが、いや、欲しくなりましたよ、余裕があるならばという条件付きではありますけど。そう、アルシオーネを。SVXでもいいです。6気筒で。