#1423 実用性に惹かれ、走行性能に感心した、ムーヴ・キャンバス。

 取材したその日に、原稿を書き上げて納品しなければいけないという仕事が、今週は2件あります。いや、これ、先伸ばしした結果ではなくて、取材日(試乗会日程)が締め切り直前にしか設定できなかっただけのこと。だけのこととはいえ、その2件ともに慣れた連載であるとはいえ、やはり緊張があります。
 というわけで、そのひとつ目、ムーヴ・キャンバス。今回の執筆は、主査へのインタビューだったので、ここではそれ以外について記しておきましょうかね。このモデルですね、女性向けが強く謳われたこともあってか、個人的にはなんとも捉えようのないモデルと感じていました。ただですね、思うにですね、いうほど女性向けなんだろうか、と思うところもあって、そんな視点をもって試乗会へと出掛けてきました。
 ら、ま、たしかに、写真にあるメインカラーのモデルは、色遣いやらに女性っぽさを感じるところはあるんですが、外装にしても、内装にしても、造形がしっかりと作ってあってですね、意外にも嫌いじゃない、どころか、シックな色合いのモノトーンとか、ボディカラーを上下で挟み込んだツートーン(3トーンか)は、結構、いいと思ってしまったほど。フロントフェイスもグリル下部があるので、ファニーフェイスには見えないし、何よりもスタンスがいい。
 で、あとは、めったに語らない実用性が、いいと感じました。そう、珍しく。このクラス、つまり、ムーヴ、ワゴンRクラスとしては初採用となるスライドドアがですね、簡単にリアシートへアクセスできるという面で、とてもいい。大型ではないので、軽く開く(といってもオートだけど)といった印象があり、それはなんていうんですかね、ミニバンのような大げさ加減がなくて、なんとなく好感触。さらには、リアシート下に用意されたトレイを利用することで、荷物があっちへこっちへと移動する心配がなくなるという、この点も好印象。
 いや、よく足を運ぶ、農産物売り場なんですけどね、とても美味しい卵も売っているんですが、これが、いわゆる卵ケースに入っておらず袋にきっちりに詰められていましてね、リアシートにどう丁寧に置こうとも、シートベルトで抑え込もうとも、荷物が動いたがゆえに、帰宅すると、ひとつは必ず割れていまして。そうなんですね、荷物を大げさではなく、気軽に固定できるギミックが欲しいと思っていましたので、まさに、このムーヴキャンバスの置きラクボックスは、個人的にとても評価できるアイテムでして……。
 さて、肝心な走行性能ですが、これがですね、全体的にはバンプストッパーによる抑えが早いところがあって、市街地メインとされているとはいえ、ボディにまで伝わるゴトンがありますし、やっぱり、低速域において、オンセンターの曖昧さ、それでいながらハンドリング操作に対してのロールスピードが速過ぎるところに違和感を覚えて、うーむ、がありました。ありました、あったんですが、これが速度域が乗ってきたら、印象が異なった。ロールスピードがぴたりと来てですね、スッーと姿勢を決めたかと思うと、そのままにコーナーを駆け抜けていく。頭の重たさを感じさせるフィーリングも少なくてですね、ほほぅ、ここにターゲットを定めましたか、と、そんなことが分かると、先のあれこれも仕方ないか、と捉えられるようになっていました。
 あと、感心したのは、ダンパーの初期の動きが作り込まれていまして、入力が少ないところという限定ではありますが、サスペンションがしなやかに動き、タイヤが美しく路面をトレースしていきます。ほほぅ、軽乗用車でこれができるようになりましたか、と驚いたのですが、ま、路面が少しでも荒れようものならば、もともとのパタパタが顔を見せますので、まだまだといった感はあります。ありますけど、何をやろうとしているのか、それが少しでも実現できているだけでも、ひたすらに感心しました。
 というわけで、なかなか、いいんじゃないでしょうか。ムーヴ・キャンバス。

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