#1352 軽でできないことを表現していた、ダイハツブーン・トヨタパッソ。

 最近Aセグメントモデルの話がやたらと出てくるのは、意図的ではありませぬ。たまたまです。というわけで、先日デビューしたダイハツ・ブーンとトヨタ・パッソの試乗会がありましたので、その話を。今回から、プレス向け試乗会もダイハツ主導であることを明確にしたもので、トヨタはあくまでも見守るかのようなスタンスであったことが印象的でしたが、月販販売目標台数はダイハツの1000台に対して、トヨタは5000台。販売力の違いといいましょうか、ブランド力の違いといいましょうか、販売の割合はそんな感じだそうです。
 さて、そのブーン・パッソですが、最近のダイハツの作り込み方と意気込みから、悪いわけないだろうと思って、試乗してみれば、悪いわけなどなく、好印象だらけ。まずは、ボディの作り込み。上と比較したら不足はありますが、Aセグにとって重要な、コストを見据えた上で、ここまで作り込んでくるとは、まぁ、感心しきり。それに伴って、シャシーの剛性感も大きくアップさせていまして……、ま、簡潔にいえば、従来のAセグのイメージはそこにはなく、また、軽自動車と比較すると、まさに、軽ではできなかったことのあれこれを、とことん詰め込んでいました。
 ハンドリング。これがですね、操舵し始めたところから明確さがあり、かつ、ノーズが素直にそれに呼応する。ちょいとクイック過ぎやしないかと思うフィーリングですが、普通にドライビングしている上では、なんら違和感なく……、というか、そのリズムに乗っ取ってドライビングしている上では違和感なく。まぁ、深く切り込んだり、操舵スピードが早かったりすると、リアのトーイン変化が感じられるのですが、通常はそんなステアリング操作しませんわな、というわけで、納得。このあたりのチューニングについては、ハンドリングを優先しつつも、乗り心地を犠牲にしないというバランスを仕立てた結果だとか。
 その乗り心地については、まぁ、これがフラット感が強くて、Aセグだったことを忘れさせてしまうほど。ほぅ、ここまで仕立ててきますかと感心しつつ、タイヤの空気圧が高いこともあって、シーンによってはタイヤがトタトタとトレース仕切れていないところもありますが、先のフラット感が好印象ゆえに、トレードオフと捉えられる部分かと。
 静粛性もここぞとばかりに引き上げていまして、外部からの音が室内へと進入してきません。当日は雨模様でしたので、スプラッシュノイズは聞こえてきましたが、それもAセグたるポジションを考慮したら、ハイレベルで抑え込んでいますので、あえて、どうこうは言いたくはありませぬ。ただ、よーく観察してみると、フロア下というか、サイドシル付近から音が入ってきていて、その点を開発陣に訊いてみれば、ロッカーアームから。サビ対策もあって、難しいところのようです。といっても、まさに耳を澄ませば、といった感じであって、気になるレベルではありません。
 快適性という面では、リアシートの居住性がすこぶる高くなっていたことが印象的でした。といいますかね、昨今の軽自動車のリアシートの作り方を見ていれば、Aセグでできぬワケはなく……、というわけで、開口部含めて、クラス感をひとつどころか、ふたつぐらい上にしたような、広さを確保。これはヨーロッパのAセグモデルでは当分、追い付けないだろうといわんばかりの、アドバンテージになっていると感じました。ちなみにフロントシートはサポート感を強めたシートデザインとし、また、このモデルのトピックでもある左右への移動を可能にした足下の空間確保も行うなど、がんばった感があります。ただ、それゆえにシートポジション(シフト位置含む)が少々犠牲になっているところにちょっともったいないなぁを感じたのも事実。ま、訊けば、女性だけではなく、高齢者もターゲットとしたことも、あってのことだそうで。
 というわけで、いろいろと不足はあります。ありますけど、セグメントと価格を考えると、上出来と評価できると思います。個人的には、MTがあったら、オモシロイのにな、と感じましたが。写真は、ダイハツのブーン・シルク。2フェイス戦略も、もはやダイハツの得意とするところとなりました。

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