#1298 大きく進化しながらも、らしさが息づいている、新型プリウスの真価。

 1月に入ってから半分が過ぎようとしているのに、ここ、3つしか書いていません。と思ったら、あれ、ふたつ。昨年、書いておいて今年になってからアップしたつもりだった年賀状解説、なんと昨年のうちにアップしていたようで……。というわけで、書かねばならないネタだらけ。まずは、最新型プリウスから。
 悪くはないだろうと思っていました。ただ、懸念していたのは、これまでのプリウスらしさを、外野からの声で、どこまで消し去ってしまったか。エコを語れるあの走り、つまり、スポーティさを意識させない、あの走り。結論、ちゃんと残したままに、全てをブラッシュアップしていました。ま、正常進化ですな。といいましょうか、そのステップアップは相当なもので、かなり驚いてしまいました。
 トヨタはこのプリウスから次世代型プラットフォーム(コンセプト)を採用しており、実現したかった全てが強烈に表現されています。ただ、その片鱗は、最近のトヨタ車からは何気に感じられていたこと。優秀な方々が作られる机上の空論的なクルマではなく、なんだかわからないけど乗って楽しさを実感できる片鱗ですな。ですので、この方向での進化を予想してはいました。でも、それ以上だった。で、何がいいってまずはボディ。剛性を感じさせるだけではなく、表現としてはしっかりとも異なるその先にある安心感まで手に入れていました。で、そのボディに作り込みが、走りから快適性まで、全てのベースになっていたといいましょうか、そんなバランスの良さがありましてね。天晴れ! といった感じにあふれていました。
 シャシーについては、まぁ、しなやかに動く動く。というよりは、渋さがないといった感じか、あれは。そして、フラットライド感がすこぶる高いのなんのって。つまりは、走りにおいて質感が高く、そして快適性もハイレベル。それに気付くと、静粛性の高さと、装備類の質感も、そこに見合っていることを発見できます。で、何よりも、15インチ仕様が好印象。転がり抵抗をここまで抑えましたと自慢しているかのようなフィーリングはタイヤだけではなく、ドライブトレイン全てで低減させましたといわんばかりのスムーズさがあります。いや、うっとり。ただし、ステアリング操舵に対して、ロールはしっかりと出てきますというか、感じさせます。それは市街地ではもちろんですが、それ以外でも。しかし、不安を感じさせる手前にちゃんと止めていて、これがまた好印象。たとえば、首都高で少々Rのきついシーンであっても、姿勢をしっかりと整えて、タイヤだけを動かして、つまりはボディはフラットなままに駆け抜けてしまいます。何よりも、15インチというサイズに止めたところも驚きでしたが。
 パワーフィールについては、先代を走らない、前に進まないといった意見があったようですが、個人的には、プリウスに求めることではないし、それに引きずられてしまうとコンセプトと異なるモデルになってしまうため、耳を傾けぬようにしていました。つまりは、アクセルを深く踏み込まずしてパワーを出すようなセッティングではなく、アクセル開度に応じてパワーを引き出せるセッティングとなっていればいいだけのこと。で、新型では、先代同様に低燃費を期待できるアクセルワークはそのままに(ノーマルモードでも)、踏み込むことでパワーをしっかりと引き出せる、つまり、ドライバー次第で幅広い走りに対応できる仕立てとしてきました。そう、扱いやすい上に、伸びやかなフィーリングも感じられ、さらには燃費もいい、と。って、これは、先代からの正常進化たる部分であり、この仕立てを発見して、ほっとひと安心したのも、また、事実です。
 今回の試乗会では燃費計測はしてきませんでしたが、低燃費を意識せずにドライブしても、30km/Lに近い数値を引き出せそうな印象を受けました。その点もまた好印象、好印象。そうそう、印象に残ったといえば、ユルユルドライビングにおいてはEV走行をキープしてくれることも、そのひとつ。先の、自在に操れる感のひとつでもありますな。
 それと、プリウス初となる4WDモデルですが、なかなか凝ったといいますか、理想的な制御をしています。それが、発進時は強制的に、いやいや、デフォルトでリア駆動を行うというもの。優れたシステムを採用し、瞬時にリアを駆動します(4輪駆動します)と謳われても、やはり、発進時に全輪を駆動した際の安心感には敵いません。ということで、この制御、燃費の面では不利ですが、個人的な好み含めて、好印象です。ちなみに、10km/hを超えるあたりで支障なければリア駆動を止めるそうですが、いつ、リアを駆動するかわからないので約25km/hぐらいまでは冷却用オイルを掻き上げてスタンバイしているとか。つまり、プリウス4WDで低燃費を期待するならば、まずは10km/h(FF)へ持ち込むこと、そして、約25km/h以上をできるだけキープすることに、ひとつのキーがあります。
 そうそう、今回の試乗会では、4WDモデルは15インチと17インチと2仕様が用意されていまして、両方ともテストドライブしてきましたが、印象はFFモデルと変わらず。比べないと見えてこない17インチならではの正確さ、でも、15インチのバランスの高さがあり、どちらを選んでもいいんじゃないでしょうかね。あと、オンロードであっても、発進時に4WD状態ということで、リアのグリップ感といいましょうか、踏ん張り感があること、さらには重量増も手伝ってのリアの粘り具合など、4WDモデルのアドバンテージもあります。
 と、ベタ褒めな新型プリウスですが、だからこそ、リクエストしたくなるいくつかもありました。そのひとつが、ハンドリングというか、タイヤのグリップ感。新開発のこのタイヤ、転がり抵抗低減を追求したキャラクターゆえに、致し方ないんですが、シャシーのグリップ感はすこぶる高いのに、タイヤからのグリップ感が分かりづらいので、ドライビングプレジャーという面で、物足りなさを感じてしまう。って、無理な要求をしていることは重々承知の上なんですが、でも、感じてしまう。そこにパワーステアリングのフィーリングもあるんですが、まぁ、この辺りは、スポーティを謳うモデルがまた出てくるのでしょうから、そちらに任せたってことなんでしょうかね。
 あとは、リアシートの乗降性は。乗るにしても、降りるにしても、頭を下げる必要があります。ただ、それを意識せずに乗り降りできるので、何故だ? と思って、開発陣に聞いてみたところ、たとえば乗り込むに際して、シートハイトをターゲットとして捉える、つまり、低いと認識しており、それによって自然と頭を下げる動作をするのだ、と。なるほどね、なるほど。たしかに、たしかに。意識せずに頭を下げていました。ちなみに、頭を下げないとぶつけてしまいます。つまりは、安易に乗降性を求めるのではなく、どうやって認識させ、どう動作(行動)させるかにキーがあるわけで、そういった観点からもよく出来ているなぁと感じた次第です。
 長くなってきましたので、ぼちぼち、まとめますとね、とってもいいと思います、新しいプリウス。いちばんオススメしたいのは、先代モデル、つまり3世代目モデルに乗っているユーザーでしょうかね。今、まだ下取りも期待できるでしょうから、乗り換えたほうがいいです、ほんとに。というぐらいに、魅力がありました。デザイン? なんかね、個人的には行き過ぎ感が好みではない、ではなく、ちょっとまずいんじゃないかなぁを感じますが、すでに見慣れてしまったというのも、また事実。って話はまた後日に。

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