#1188 2シリーズグランツアラーにあふれている、新世代BMWの真価。

 FFのBMWって、どうさね? との議論も冷めやらぬ間に、BMWはFFモデル第2弾として、サードシート付きモデルの2シリーズグランツアラー(写真左・青)をデビューさせました。ただ、このモデルへの関心は、個人的にはサードシートが付いたことにはなく、ノーマルサスを採用したその乗り味、そして、ディーゼルエンジンが組み合わされたことにありました。特に、サスペンションについては、アクティブツアラーでは、日本のひとつの全高基準(1550mm)に収めるために専用スポーツサスを採用していましたから、グランツアラーにノーマルサスとの組み合わされたことで、その素性を知ることができる……、つまりは、期待大でした。
 で、今日、試乗会がありまして……、で、いきなり結論ですが、いずれもその期待を大きく超えていました。まず、ノーマルサスに関しては、走り出した瞬間から分かるしなやかさがあります。そして、そのしなやかさをもって路面からの入力をすんなりと往なします。ただ、しなやかなだけではなく、そこにはストローク感もしっかりとあり、ダンパーの適切な減衰はじんわりとした動きを表現しており、つまりは、乗り心地がとてもとてもいい、つまりは快適。ま、それは、ディーゼルエンジン搭載による重量増と、ロングホイールベース化もプラスに働いていますが、それを取り払ったところにある、素性でもありますな。そのしなやかさに対して、ラグジュアリィとかアッパークラスとは異なるモデルにおいても、BMWがこういう乗り味を作ってくるようになったか、と、ちょっと衝撃を受けたほどでした。新しさとまでは言いませんが、そんな衝撃。
 ですから、まさに、日本仕様のアクティブツアラー(写真右・白)は、このいくつかの部分と引き換えに、1550mmの全高を手に入れたと言えましょうか。そして、そのトピックは、全高だけではなく、スポーティさをキャラクターとしているところにもあります、と。なるほどね、なるほど。ちなみに、追加されたディーゼルエンジン搭載車にも試乗しましたが、やはり重量増も相まって、日常域において、ガソリンモデルよりも硬さが薄れた、つまり、快適性を高めていたことが印象に残りました。
 ハンドリングは、FFっぽいと感じる人もいるでしょうが、個人的には旧世代の電動パワーステアリングを用いたFRモデルよりも素直さを感じるところが多く、もはや、このクラスのハンドリングにおいて、レイアウト違いを語ることに、どこまでの重要度と言いましょうか、意味合いがあるのだろうかと、ちょいと考えさせられてしまったほど。というわけで、そのステアリングフィールは、ニュートラルステアが好印象で、操舵力もオンセンターから切り足し、そして、グリップを求めるところまで、わりと一定であり、ウェットという悪条件にも関わらず、路面の接地感もあいまって、不足を感じさせませんでした。そして、いつしかとんでもないスピード域に達してしまう始末。で、なぜ、そんなにスピードが出てしまうかというと、やはり、直進安定性に長けていることに付きましょうか。シャシーはしなやかといえ、シャシー剛性は高く、この点では、FFでありながらも、いわゆるBMWらしさにあふれているかと。特にリアにおけるスタビリティの高さは、相当にハイレベル。って、この点は、日本仕様サスペンションを奢ったアクティブツアラーに強く感じます(#1104)。ま、この"シャシーの速い"ってことなんです。はい。
 ディーゼルエンジンの太いトルクは、どの回転域からも力強い加速を提供してくれるため、つまりは、扱いやすさにあふれていまして、ナニゴトもなかったかのようにとんでもないスピード域へと誘います。要注意といわんばかりに。ただ、低回転域でのトルク変動は強く、もう少し最大パワーをもう少し落として、フィーリングを丁寧な仕立てにしてもいいのではないかと思うところもありますが、あの太いトルク感に打たれてしまうと、そんなのどうでもいいと思えてきます。ちなみに、ノック音は、このモデルに限らず、BMWの2.0Lディーゼルエンジンは、大きめ。ちなみに、いわゆるディーゼルサウンドで耳障りとされるカラカラ音は、少し離れたトイレまで届いていましたので、まぁ、これも購入の際には要チェックポイントでしょうかhね。個人的には、あのトルクフィールが手に入るなら、どうでもいいサウンドだと捉えていますけども。あ、といっても、室内にいるとカラカラサウンドは聞こえず、といった、例のごとくの仕立てをしていまして、この点は、さすがBMWといった感があります。

 さて、まとめ。パッケージングはさておき、クルマとして、買い。走行性能として買い。そして、モノスペースとして買い。サードシート付きモデルとしては、どうかわかりませんが……。
 アクティブツアラー、グランツアラー、両車を比較した際に、バランスがいいと感じるのは、そして、日本で乗るにはぴったりとくるのは、やはりグランツアラー。で、やっぱりディーゼルがいいでしょうな。ちなみに、サードシートについては、セカンドシートレールが邪魔をしつつも意外にも足を置くスペースが確保されていましたが、体育座りを強いることからも、快適に座れることよりも、付いていることに意味合いを見いだすといった、存在と捉えておいたほうがいいと思います。自動車雑誌的な表現を使うならばエマージェンシィ的となりましょうかね。
 そういえば、このモデルを紹介する際に、BMW(日本法人)が、MPVという単語を用いていたことが印象的でした。このブランド、カテゴリーを表現する時に、SAVのようにオリジナルな言葉遣いをするじゃないですか。ほかとは違うことを主張するかのように。ところが、一般的なカテゴライズ表現であるMPVという言葉を使ってきまして、そのスタンス変更にちょいと驚きました。で、この点について訊いたところ、やはり日本のみとのこと。BMWであっても、一般に分かりやすい表現を使うことが求められている……、使わねばならないようで、まぁ、販売台数を増やすために、新しいお客さんを呼び込むために、こうした新たな試みも必要なようです。ちなみに、本国にはちゃんと了承を得ているとのことでした。

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