#1157 ひとつの完成形に到達していた、スズキ・ジムニー その1

 ふと、ジムニーを借り出しました。このジムニーとの付き合いも何年になるんでしょうかね。現行型デビューは98年ですから、かれこれ17年近くになりますかね。取材で、奈良だったかまでリアシートに座っていった時に、わりと居心地がよくてビックリしたことや、信州の林道やらへ出かけたり、まぁ、チェックしてきました。最近では、改良のたびに、最終型だと言われつつも、期待を裏切るかのように改良型が出てきますが、そろそろ本当に最終型なんでしょうな。ということもあってのチェックでした。
 さて、その熟成度については、少し前に語りましたので、今回は、あらためてジムニーをインプレッションしてみましょうかね。このモデル、縦置きエンジン、前後リジッドサスペンション、フレーム付きボディ、ボールナット式ステアリングといった、イマドキのSUV的とは異なる、旧態依然としたハードウェアをベースとしています。ですから、そこに独特のクセがあり、またそれがジムニーの味であり、らしさとなっています。
 簡単にいいますと、そのフィーリングは緩さにあふれたもの。と表現すると聞こえはいいんですが、スポーツカーとは対極にある緩さであり、言い換えますと、悪い意味でのいい加減さ。ボールナット式ステアリングは、オンセンターの曖昧さを強調し、リジッドサスという形式だけではなく、オフロード走行を狙ってのシャシーの横剛性セッティングも相まって、ボディの揺れを許容します。つまりですね、それこそスポーツカーに慣れた人からすると、その曖昧さに不安感を覚えてしまいます。それほどに、オリジナリティにあふれています。あ、よく言えば、ですな。
 ただですね、それとて、細かに観察していくと、リズムがあります。ジムニーならではのリズム。改良を重ねて明確になってきたのは、そのリズム、リズム感ですな。たとえば、ステアリングが曖昧ったって、上手く操作すれば曲がらないわけではありませんし、揺れがあるといっても揺れを出さないドライビング方法があります。コーナーでは、少し手前から意識して、緩やかに減速して、フロントへと荷重を移しつつ、少々早めにステアリングをわずかに切ります。緩やかにロールへと転換していくフィーリングを感じながら、で、ステアリングをゆっくりと切り足していくと、きれいにコーナーを駆け抜けてくれます。このクルマ、ロールスピードが早いところがありまして、ステアリングに曖昧さがあるからと大きく切り足すと、唐突な揺れが出ます。なので、緩やかな操作が肝心となるんですな。
 ただですね、ロール量は、意識的に抑え込まれていまして、スタビライザーによる規制がかなり強い。もちろん、それは安定性を求めてですので、悪いことではありません。ただ、ロールした際、スタビによる突っ張り感が明確すぎて、そこでのタイヤのグリップ感がちょっと分かりづらい。なんていうんでしょうかね、あまりにシャシーに支えられ過ぎていて、どこまでグリップしてくれるかが見えづらいとでも言いましょうかね、そんな感じ。そして、そんなシーンで路面に凹凸があると戻りを誘発するために、ドライバーは少々ナーバスになってしまいます。って、このセッティングが悪いというわけではないんです。この手前、つまり安心を感じ取れるラインまでが、ジムニーの許容範囲と捉えるべきであり、つまりは、挙げたあれこれをウィークポイントとは捉えたくありません。この辺りのセッティングは、安定指向というか、安心指向へと、改良のたびに、変化してきました。ま、まさに、いい感じで熟成しているな、と言える部分ですな。
 エンジンは、まぁ、あれこれありますが、ATとの組み合わせともなれば、発進時のトルコンの大きな滑り含めて、フラットトルク感を仕立てていると、言えましょうか。む、無理があるか。ただですね、エンジン回転(音)に対して、もう少しパワーがついていってくれるといいのにな、と思うことは多々ありますかね。
 って、まだまだ、書きたいことありますが、長くなってきましたので、次へ。

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