#1090 基本性能向上たる正攻法が好印象、アルファード、ヴェルファイア。

 さてと、新型アルファード・ヴェルファイアの試乗会のあれこれを。どこかで書いたかもしれませんが、このモデル、開発陣が込めた想いと、オーナーの捉え方とにズレがある商品だと感じていました。コンフォート感を大切に作り込んだその思いと、オーナーがこのモデルに期待するスゴミとにある、差。それは、全国のこれらモデルの、タイヤサイズとローダウン量の平均値とノーマルの差にも現れていると思われます。いや、そんな平均値を出した人はいませんけど。ということで、新型がどのようなテイストで作り込んでくるかは、いろんな意味での期待感がありました。
 で、どうだったかと言いますと、プレス試乗会でのプレゼンテーションでは、"いかつい"、"ラッセル車のような"、"地を這うスタイル"といった言葉が使われながらも、実車はコンフォート感を優先した作り込みが感じられ、その落とし所に、なるほどね、うまいね、を感じました。
 で、その中でも好印象だったのは、直4/2.5L+17インチ。これまでの直4はパワー不足がウィークポイントになっていましたが、今回はそれがない。ワイドレシオ化されたCVTも相まって、発進時から十分なトルクを発生させたかと思うと、高回転までパワー落ちせずに回っていきますし、そんなパワーを感じさせながらも、回転上昇とのリンクもきっちりと作り込んでおり、これがとてもいい。で、高速の追い越しも、高速の坂道も、ゆとりを感じるほど。もはや、不足は、4気筒であるがゆえの音、振動のみといった感すらありました。
 シャシーは、リアサスのマルチリンク化も相まって、これもまたいい。ハイブリッドにも使用することを前提に開発したという新しい17インチタイヤが、その転がり、トレース性能に長けておりまして、"上質"と感じるほど。少々のコトコトはありますが、市街地から高速に至るまで快適性に不足は見当たらなかった。それでいながら、コーナーでのグリップ感、グリップ力ではなく、この場合もグリップ感がとても高くて、うっとり。そのコーナリングでは、ロール量は先代と大きく変えていないというものの、フィーリングに絶妙の動きを与えており、拍手喝采といった感じ。分かりやすく言いますと、姿勢変化が穏やかで、かつ姿勢が決まると、そのままにボディを動かすことなく(つまりサスだけを動かして)、何事もなかったかのようにコーナーを駆け抜けていってしまう、と。いやはや、いやはや。
 そうなんです、コンフォートテイストといってもですね、演出によって得たのではなく、クルマとしての基本性能を高めることで手に入れた本質的な快適性でして、それは、スポーティさのベースにもなるもの。そうなんですね、この正攻法によって開発陣の想いとユーザーの期待ともにバランスさせていたのです。いや、天晴れ、天晴れ。
 さて、触れては来なかった、18インチやV6、はたまたハイブリッドはどうだ? って話になるんですが、悪くはないものの、ついついあれこれを言いたくなる。18インチは、操縦性やらに明確さは出てくるものの、乗り心地にコトコトとした動きが強まり、凹凸の大きなシーンではゴトンが顔を出し、あと少しを求めたくなる。V6は、パワーや吹け上がりに分があるものの、価格差や2.5Lの仕上がりの良さから、選びたくなる理由が少なくなる。ハイブリッドモデルは、専用シャシー(V6・エグゼクティブラウンジも)によって乗り味にしなやかさが増すものの、ガソリンエンジンの高回転域のサウンドに、見合っていない感を覚えてしまう。うーむ。
 デザイン? ま、好き嫌いですので、コメントは避けますが、ここまでよく仕立てましたなぁといった感があります。個人的に好みとは違います。でも、評価していますって感じでしょうか。
 ま、価格も含めて、ずいぶんとアッパークラス感を手に入れたなと思えば思うほどに、サイズ、価格やら、新型へと移行しない人が選びたくなるモデルを期待してしまいます。つまり、エスクァイアの乗り味やらをもっと上質にしても良かったのではないか、と。そんなことまで感じたのでした。

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