#792 SUVとて雪道走破性は最低地上高だけでは語れませぬ、という話。

 先日の雪かきやら、街中の会話やら、今日の走行やらで、ヨンクだからと、SUVだからと、すべてが雪に強いとひとくくりにするのは好ましくない、とあらためて感じました。最近、乗用車のプラットフォームベースながら、タフさを謳うSUVを見かけますが、タフさの本質では、いわゆるクロカンベースSUVのそれとは大きな差があります。と表現すると、道なき道を走れるというレベルには届いていないのは当たり前でしょ、と思われるかもしれませんが、その線引きはもっと手前にあります。たとえば、写真右のようなシーンなら大差ないでしょう。ところが、今回のような最低地上高を超えるような降雪量では明らかな性能差となって現れます。
 たとえば200mmの積雪路があったとしましょう、そこで同じように最低地上高が200mm確保されているモデルであってもですね、クロカンベースモデルではデフやトランスミッションの一部がひっかかる程度であるのに対して、乗用車ベースモデルではアンダーフロアの多くがその高さ付近にありますから広い面で引きずってしまう……、って、それだけでも何かが異なることが見えてきます(これは3アングルも同様。その話はまた別機会に)。そして、4WDシステムの走破性能もそのレベルにて設計されています。つまり、乗用車ベースのモデルでは、グランドクリアランスが許す限りは走れるけれども、それ以上といったシーンで、多くを期待しても応えてはもらえないと。CVTにしてもそこから先のストレスには耐えられません。
 一方スタックしないモデル(先の前者)は、ヒットしにくいクリアランスに加えて、アンダーフロアに面や雪があたってもそれをスキッド(skid・滑らせる)させる機能が与えられており、さらにスタックしにくいという性能があります。その上で、その本質的なクリアランスに併せるかのように、リジッドサスやデフロックといったハードウェアによってトラクションを確実に……を大きく超えて無理やりに伝えて走破する設定としていますから、つまり、最低地上高から想像される以上の走破性を期待できるわけです。また、いずれのモデルも“ロック”というモードを持っていたとしても、前後トルク配分のロック気味にするシステムと、デフをロックしてしまうシステムという違いがあり、走破性のレベルが大きく異なっているのです。
 なんてことをつらつらと書きますとね、クロカンヨンク以外を頭ごなしに否定しているように聞こえるかもしれません。でも、違います。ここのところの雪のあれこれで、そこには大きな違いがあることをはっきりと伝えないといかんと思ったから、こうして書いています。実は今回の雪で、エクストレイルだからこんなのへっちゃらでしょと出かけた方がいたのですが、すぐそこでスタックして戻ってきました(もちろん戻るにひと苦労)。そうなんです、今回のような降り方でも対応できそうなイメージはよろしくない、そう過信させてはいけないと思ったわけです。
 自動車雑誌にて、そうしたモデルを紹介する時、自身は、モーグルのような地形は無理、スノードライブ程度に止めておいたほうがいいという表現を用いています。もちろん、文章中で触れるだけではなく、それを明確にした企画にしなきゃいけないのですが、いけないのですけどね……、提案しても採用してもらえません、残念ながら。ということで、ここでだらだらと書いているわけですが……。
 えっと、エクストレイルを具体的にピックアップしていますが、あくまでも身近にあった例であり、エクストレイルの4WD走行性能を否定しているわけではありません。どこまで走れるかを把握しておくことが大切だと言っているまでです。もちろん、同じことが言えるモデルはほかにもあります。フォレスターも、CX-5も、アウトランダーも、ティグアンも。エスクードは、コンセプトと生い立ちが少々異なっており、そのレベルは少々違いますな。
 自動車雑誌では、優劣を簡単に表現する星取り表が用いられることが多々あります。分かりやすさという意味ではとても有効な手段です。しかし、優劣とは異なる実質的な性能が、その星取り表の裏に隠れてしまっていることも知って欲しいと思っています。それは、オーナーの満足度をもっと高めることのあれやこれや。もちろん、過信させないことも含めてね。

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