#775 新パワートレインの採用によって、大きな進化を果たしたプジョー208。
というわけで、新しいパワートレインを搭載したプジョー208。あれです、新開発の1.2Lエンジンと、オートクラッチ付きMTトランスミッション(ETG5)と、オートストップを採用した208。結論からいいますとね、洗練されたシャシーと、新しく採用された技術とが、ハイバランスしていました。つまり、いい。とってもいい。想像以上にいい。
1.2Lエンジンは、昨年#430にてベタ褒めした208Allureに搭載されていたユニットですが、その印象は変わらずのまま。最近の新開発1.2Lといいますと、そこに過給器(ターボやスーパーチャージャー)が付いて排気量以上のパワーを発生するのがデフォルトとなっていますが、このエンジンはNAのまま。そう、NA。で、最高出力は82ps。ゆえにパワーないでしょ? と思われるかもしれませんが、これがある。というか、トルクがある。というか、回転域における役割分担がしっかりとできています。トルクピークを2750rpmとしていますが、この回転域までトルクをしっかりと発生させながら、ここから先ではトルクは落ちつつも回転数で稼ぐ、つまりパワーで稼ぐといった役割分担をしっかりとしており、全回転域において不足を感じさせません。その計算も好印象と言いますか、天晴れと言えるところ。もちろん、過給器付き1.2Lと比較してしまえばトルク感は薄れますし、高回転域ではパンチに物足りなさを感じます。しかし、NAらしいフィーリングと小排気量なりの軽快感にあふれており、ふと、スピードメーターに目をやるととんでもない速度域になっています。考えてみますと、昨今のエンジンは1.2Lターボでさえ、そこまでのパワーは不要でしょといえるほどですから、ベーシックならばNAでも十分と言える時代が来たのかもしれませんな。
シャシーは、タイヤを路面に押しつけ続ける、そう、路面がタイヤを離さないのではなく、タイヤが路面を離さない(!)フィーリングをベースにしながら、その動きに愛おしくなるような細やかさを表現しています。つまり、猫足たるフィーリング。昔のプジョーほどのリバウンドストロークはありませんが、その動きに精密さが与えられ、まさにタイヤのたわみを使うことなく、サスペンションだけで猫足を作り出している感じがあります。以前よりも扁平率の低いタイヤを見事に履きこなしているといった印象ですな。試乗したのはガラスルーフを備えたシエロでしたから、重量増も相まっての乗り味でしたが、それを差し引いてもプジョーらしい、コンフォートとスポーティをバランスさせた心地いい乗り味がありました。
と、長くなりましたが、ATからETG5へとスイッチしたことで、プジョーの2ペダルモデルは、プジョーらしさを大きく向上させました。MTじゃなくてもいいんじゃない? そんな時代がようやくプジョーにも来たことも感じました。