#770 心を落ち着かせ、そして豊かにしてくれる溝口 肇サウンド。

 音楽つながりネタってことで。チェリストである溝口 肇のサウンドも好きです。世界の車窓からのテーマ曲(右はYoutubeより)といえば、ああ、あの曲ね、と分かるかと思うのですが、その曲を作られた方です。そもそもの出会いは、1本の販促用カセットテープでした。80年後半だったかに、ソニーミュージック(CBSソニー時代か)が、和製でNew Age(Musicって言葉はつけていなかった気がする) をピックアップしました。手にしたカセットテープはその販促用で、これも記憶があやふやですが、“真っ白”ってキャッチと、相原コージのかってにシロクマのイラストが描かれており、たしか、それぞれの作品がフルサイズ収録されていました(これも曖昧ですが)。
 そこにあった溝口 肇の曲が、タバコのPeaceのCMに使われいた曲で、タイトルも「P・e・a・c・e」(→Sonymusic視聴)。嫌煙なスタンスはその頃からでしたが、タバコとは関係なく、この曲を聴いた途端にショックを受けました、まさに、落ちました。適度なリバーブとチェロのソロの奏でによって作られた不可思議な空間が、頭に浮かんでくる、そんなクリエイティブ感を初めて味わい、音楽ってのはメロディだけを追いかけるのではなく、その音が響く空間を想像させることが大切なんだな、なんてことを知りました。そして、そのCMも、Peaceってタバコに与えたかったイメージをダイレクトに表現しているなと、その演出を含めて、強く感心したことを今でもはっきりと覚えています。
 さて、長くなってきた。ま、そんなきっかけから溝口 肇を聴くようになり、コンサートにも足を運ぶようになりましたが、その音楽的な表現は、広くに受け入れられるにつれて、明らかに変わっていきました。もちろん、何かに影響されながら、影響を与えながら、変わっていくものですし、多くの人が望んでいるのは世界の車窓からであることも含めて、それを否定するつもりはありません。そもそも、この人が音楽を書くようになったのはコマーシャルベースではなく、自らが眠るための音楽にベースにありましたから、たぶん、誰のための音楽か、そんな視点が変わっていたんだろうなと眺めていますが。そう、好みの問題。ただ、最近ですね、震災をきっかけにふたたび眠るための音楽を作られ、なんと無料で配信されています(→)。そんな志に感心しながら、そのサウンドにどこか懐かしさを感じたりもしましたが
 さてさて、さらに長くなってきた。眠るための音楽という意図がどこまであったかは分かりませんが、初期の作品(iTunes→)には、チェロにデジタルサウンドを組み合わせるという“試み”が多く行われておりまして、それがとてもおもしろかった。生楽器とデジタルを併せる手法は、この少し前から坂本龍一がやはり試みていましたが、丁度、自らもその両方に浸っていたこともあって、そんな新しい表現に心地良さを感じていたことを覚えています。
 ちなみに、弦楽器の中で、習いたかったのはバイオリンですが、その音色としていちばん好きなのはチェロ。語りかけられて心落ち着くような心地良さがある……、なんて話をあるチェリストにしたら、人の発する声の周波数帯にいちばん近いから、と教えてもらいました。なるほどね、なるほど。それで心地いいんですな。
 たった1本のカセットテープとのふとした出会い、きっかけが、今にここまで影響を与えるとは思いもよらず。それにしても、あのカセットテープ、どこへ行ってしまったんでしょうかね。実家にあるかな、まだ。

このブログの人気の投稿

#1297 イチオシに変わりなかった、ルノー ルーテシア ゼン MT。

#1113 5年目にして……、トラブルではなかった、後付けサンルーフのあれこれ。

#1735 快適すぎるし、愉しすぎる。想像していたその先に到達していた、プジョー308。