#627 愉しいから、愉しさが連鎖する、でも、乗る人を選ぶ、FIAT Panda。

 さて、Pandaですな。1300kmほど乗ってきましたが、これがとてもよかった。#616にてべた褒めしたup!とは異なるよさにあふれていました。サイズやら価格こそ近いのかもしれませんが、両車はある意味、対極な存在になっているような気がしました。それは過去のVWとFIATたる、堅物さといい加減さ、ではなくて、マジメさとラフさとでも言いましょうか。変わらない? ま、似てるか。逆にいえば、VWは遊び心を、FIATはまじめさを意識した、そんな印象があります。
 それは走りにも言えること。やはり2気筒エンジンという大胆な選択をしたPandaは、いい意味でも悪い意味でも、割り切りがありました。それは500とは違う提案ともいえるもので、逆にいえば、国産車には出来ないほどの大胆さ。優先すべきことが明確であり、それに自信がある。だからこその2気筒エンジンの採用なんでしょう。だから、振動があります。でも、エンジンのパワーフィールには愉しさがあふれています。それでいながら燃費がとてもいい。気になる2ペダルMTは、基本はマニュアルモードで使うことには変わりありませんが、オートモードでも不満を感じないレベルにまで仕上がっています。この点では、up!よりも上。ただし、時たまにみせる戸惑いがあるのも事実。とはいっても、それはまたなのかい? と思えるものであり、それを不満だと口に出したくはなくなります。それを打ち消しているのは、愉しさがあふれているから。
 ターボエンジンは、ドッカンではなく、ゆとりを表現しており、857ccという排気量以上を感じさせます。3500回転以上であふれて出てくるトルク感は美点であり、日常であっても、積極的に使いたくなる衝動に駆られるほど。そう、だからこそ、この2ペダルMTが必要なのです。ATやCVTではなくってね。
 シャシーは、あたりを柔らかくしながら、サスそのものは締めあげ傾向にあります。だから、高速域でのスタビリティはハイレベル。昨夜の台風来襲な高速道路を走って帰って来ましたが、その安定性はクラスを大きく超えておりました。そんなシャシーセッティングですから、低速域の路面が荒れたところではやはりバタバタが顔を出します。ドタバタではなくて、バタバタ。で、コーナーでは気持ちいいほどのロールを伴いますが、グリップ感を探るのが少々難しい印象があります。といっても、探りにくいだけであって、グリップ力が弱いわけではありませんから、心配なく。
 そうなんです、先のエンジン回転域と、シャシーの動きのいいところと、あれこれ探り出して、走ると、一気に気持ちよさがあふれ出す、そんなクルマなんです。つまりですね、クセを楽しめる人ならば、すんなりと受け入れられるモデルです。それは、何事をも楽しんでみようというスタンスがある人ならば、勧められるとも言えますな。というくらいにキャラクターが、提案が明確なモデルです。そして、こういうスタンスって、ライフスタイルって、いいよねと、後押しをしてくれます。つまり、相乗的に愉しさがあふれ出してくると。日常でも、非日常でも、なんでもかんでも愉しくなる。そもそも、非日常を云々と語る商品性に対して、何か矛盾を感じていました。いいものって、日常でも非日常でも愉しくしてくれるはずだし、いずれにも実用性があるはず。そういう観点からすると、Pandaはとてもいい。だから、それを探れないと、逆にただのクルマに成り下がり、先の不満だけが印象に残ってしまいます。だから、なんだかんだいいながらも万人向きではないのかなとも思いました。
 さて、最近の恒例となった、気になる燃費ですが、
 ・都内にて渋滞と赤信号に出会って、うろちょろとAve19km/hで走って、15.2km/L
 ・郊外の広めな都道を止まりつつすたこらさっさとAve25km/hで走って、22.5km/L
 ・法定速度80km/hな高速道路をまったりゆったりAve74km/hで走って、30.4km/L
 と、小排気量なりの低燃費となりました。
 特に、30km/L超えについては、5速に入れて、回転数を2000回転以下に抑えての話。先行車の加減速やら、道の勾配といった悪条件に入ると、すぐに崩れますが、それでも27km/L前後をキープしてくれます。そうなんです、ハイギアード気味とはいえ、MTゆえにキーになるのはエンジン回転数。ギア比と速度とシーンと、上手くさぐることが低燃費を引き出すキーになっていました。

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