#598 安易に価格にこだわらず、いいものであろうとする、新型フィットの正攻法。

 さてと、フィットです。そう、3世代目へとスイッチしたフィットです。まぁ、よく練られており、想像以上の仕上がりになっていました。そもそも、どう想像していたかと言いますと、悪いわけはない、と。なぜそう思っていたのかといえば、最近のホンダの新型車に仕上がりやら商品性からの予測。そう、これはBMWの次もいいだろうにとても似ています。つまり、方向性がしっかりと定まっているか否か。最近のホンダは、Nシリーズに代表されるように、製品に対する自信、こだわりが明確であり、そう、このフィットも悪いわけはない、と期待したわけです。
 ここでは、さらに想像以上だったことについて触れておきましょうかね。まず、1.3Lは、これまでのベーシックテイストは消え去り、スタンダードを語れるほどになっていました。それは質感からパワーまで。その中でも強く印象に残ったのは、CVTの制御とトルクの出し方で、2000〜 3000回転でのダイレクト&トルク感は、もはや排気量以上のストレスフリーがあります。レスポンスが鋭いというよりは、的確なレスポンスがあり、扱いやすさにあふれていました。それが、いちばん分かりやすいシーンは交差点内での右折待ちからのスタートでしょうか。スッと発進したままにグーンと走って行きますから、まさに不安に思うことがなかった。そう、ドンと発進して、ガーンと加速していかない。そう、ここがポイントですな。
 ハイブリッド、1.5lともに、スタンダードというよりは、アッパーグレード的なテイスト、つまりワンランク上を共通としていました。とにかく、乗り味において、ハンドリングから乗り心地に至るまで、質感が高い、高い。ハイブリッドは、モーターを加えたことで、必要以上のフィーリングを作り上げており、燃費主義を謳いながらも、それ以上の価値のほうにアドバンテージがあるんじゃないかと感じたほどでした。そう、こんどのフィットのラインナップには、パワーというヒエラルキーはそこにはなく、自分の好みで選べばいい、そんな選択肢が並んでいます。ゆえに、ベストバイという考え方はなく、好み次第で選んでいい。ちなみにRSは意外にもヤンチャというよりはベースになった1.5L流の質感をそのままに残してありまして、これがかなり好印象。ゆえに、ヤンチャモデルとして、タイプRを存在させるのも、アリだなと思ったほどでした。
 そんなインプレッションをしながら、試乗後にあれやこれやと開発陣に訊けば、やはり1.5Lをベースに作ったとのこと。つまり、そこから、1.3Lを仕立てる上で、不要なものを取り去り、必要なものを残したのだ、と。そう、1.3Lをベースにして、何かを付け足して1.5Lやハイブリッドを作ってはいませんでした。ですから、それらは、商品性としても、ただ高いとか、装備が云々ではなかった。これらがフィット好印象の要因でしょうな。
 そうそう、付け足し。シャシーのポテンシャルも好印象でした。4輪をしっかりと接地させることをしっかり表現しており、石畳では、その乗り心地を崩すことなく、同時に操縦性も破綻させておらず、このクラスとはハイレベルのバランスを与えられていました。
 ただし、と、付け加えるならば、あと少しのキャラクターを期待してしまいます。クルマとしての愉しさかな。たぶん、あっちにはあって、こっちにはない、唯一のウィークポイントのような気がします。つまり、実用性を超えた、走りを含めた質感の話。価格帯を考えると致し方ないといい訳もできますが、ベースポテンシャルは相当にハイレベルですから、愉しさをアップさせることは可能なはず、とも感じました。

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