#393 シンプルがカッコイイ、ベーシックであることがスマート、ってなクルマ作り。

 #392でビートルのことをあれこれ調べていたら、アメリカのVWの戦略が、かなり特殊であることに気付きました。中でもゴルフにしてもパサートにしても直5/2.5Lをメインにして、価格を意識的に抑え込んでいることが印象に残りました。たとえば、パサートは、いわゆるミドルサイズセダンに真っ向から勝負を挑んでおり、価格は$20,845(画像)からスタートさせ、スタンダードグレードはこのセグメント最大のライバルであるトヨタカムリと同価格帯の$22,000台。つまりですね、特別感をあえて演出するのではなく、パサート本来のスタンダード的なポジションとしています。しかもMTがあるし、いいなぁ、いいなぁ、と思いつつ、ほかの車種を眺めていたら、ティグアンにも独特の傾向がありました。
 エンジンは直5/2.5Lではなく、2.0Lターボを基本としていますが、ボトムグレードはFFで$22,995と安いこと安いこと。まぁ、装備は簡略化されていますが、そんなことよりも、そのベーシックたるスタイルがカッコイイ(写真左)。あえて、選びたくなるかっこよさがあるのです。なんていうんですかね、安いグレードがゆえに外されたとか、省かれた感がない、ない、ない。いわゆるアングルを確保したオフローダーたるエクステリアをすべてに採用していますが、ここにフォグランプがなかろうと、HIDヘッドランプが採用されていなかろうが、むしろ、それがカッコイイ。ちなみに、このモデルの$22,000台は、やはりライバルとされるRAV4あたりと同価格帯だったりします。つまり、真っ向から挑んでいるわけですな。
 では、ヨーロッパバージョンはどうなっているかといえば、イギリスの場合、基本はエンジンは小排気量ターボとなり、スタイリングはいわゆるクリアランスを犠牲にしたオフロードへ行かない人向け仕様がベースとなります(写真右)。そんなスタンスながらも、ベーシックグレードがちゃんとありまして、これがまたカッコイイ。フォグランプがなかろうと、下側グリルにメッキ縁取りラインがなくてもカッコイイ。アメリカ仕様と同じようにこれで成立しています。というか、むしろ、こっちがいい。16インチサイズのホイールもデザイン的にバランスが取れているように見えます。無理していないし、チープに見えないところが秀逸なんですな。
 さて、では、日本仕様はどうかといえば、左の写真がそれですが、比較すると、随分と着飾った感があることに気付きます。言い方はあれこれありますが、見方次第では、高級感があるともゴテゴテしているとも表現できます。写真のモデルは、最新の日本仕様のボトムグレードで、FFではありますけど、17インチアルミホイールを履いてナビまで付いて、339万円ですから、よく頑張りましたと言ってあげたくなります。まだ試乗はしていませんが、軽快感あふれてて、多分、ハイバランスしているでしょう。来週、試乗会があるのでその乗り味については後日に。ちなみに4MOTION(4WD)が最上級グレードのみとなった件は、日本市場だからこそ4WDは必須とも思ったのですが、ボトムグレードの価格から察するにFFという方向も十分に認められるような気がします。事実、必要かどうかを考えると云々。まぁ、かつてのステーションワゴンのように。
 何が言いたいか。何が言いたいんだっけか。あ、えっと、同じモデルでも仕向地でのバリエーションを最初から考慮したクルマ作りが行われているってことですな。個人的な趣味はさておき、仕向地での戦略に基づいて、同じティグアンをこうも違って見せ、そして価格帯を設定しており、ナビまで日本仕様に仕立ててきている点など含めて、もはや、おちおちしていられない感がありますな。
 それにしても、日本ってのは生きにくい国だなと思うことがあれこれあります。個性一元化から、選択肢がない。このティグアンだって、アメリカのような仕様があれば飛びついていたかもしれません。まぁ、大衆から自分が外れている、つまり少数派だけって話でもあるんですが。変わっているとか、ヘンともいいますな。いやはや。

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