#324 一見すると変わっていないように見えるをダイレクトに表現した、The Beetle。
今度は、The Beetleです。先代はNewで、新型にはTheですか。上手い、実に上手いと思いました。こうしたキャラクターが強い商品は、クルマに限ることなく、次世代へ移行することがとても難しいものです。そこにある尖ったモノがデザインであれ、走りであれ、価格であれ、オーナーたちによって作られた支持であれども。開発時、その変えられないモノに対して、開発陣の中では相当なストレスが発生しているはずなのですが、新商品となってデビューすると、そのほとんどは、商品を徹底的に分析し、Re-モデリングしたと堂々と謳われています。いや、もちろん、それはウソ偽りない言葉だと思います。ただ、スイッチを誤ると、新世代モデルは失敗作と見なされ、もしくは旧世代を否定しかねません。延々と語られることになりますから、ほんと、難しい。
いち素人が考えるに、この手のモデルにおけるキーは、単体で見た時に、変わっていないように見えることかと思います。ある意味、デザイン優先。と思ったのも、3世代のビートルを比較して、初めて分かったこと、そうでないことがありまして。たとえば、そのクルマのデザインに対して、多くの人はディティールまで覚えておらず、キーとなるアイコンとなる部分のみを覚えていて、そのいくつかが揃ったことで、そのモデルとして認識を行います。そういう意味で、変わっていないと思わせること、つまり、そのポイントを抑えておくことが大切だと。そして、横並びにした時に意外にも大きく変わっているところが多かったりすると、オドロキを感じさせ、それが存在を認めることへと繋がると。まさに、これ、いいんじゃない、と。もしくは、これも、いいんじゃない、と。
で、The Beetleですな。そんな企みも含めて、よく考えられたクルマでした。乗り込んでみるとフツーであることに気付きます。外観のようなデザインのクルマに乗っているという意識は、確実に先代よりも少ない。でも、細かに見ていくと、ビートルらしさは表現されています。少ないですが。そして、シートポジション、周囲の視界もフツーといいますか、VWであることを強く感じます。結果、シートに座った瞬間の、あの戸惑いがない。そう、フツー。で、走り出してみれば、1.2Lターボはパワーはもちろん、躾も十二分だし、発進時のDSGのギクシャクも少なくなったかのよう。乗り味は、最新のVW流であり、あたりの柔らかさ+シャシー剛性の高さを強く感じ取れるもの。VWとしてはフツーですが、まさにいやはやな部分でもあります。
そして、リアシート。頭上からリアガラスが消え去り、ポジションはともかくスペースもしっかりと確保されており、先代よりもかなり快適になっていました。ただ、トーションビーム式サスと17インチタイヤによって、乗り心地は少々の我慢を強いられるようですが。まぁ、割り切りと考えれば、リアのパッケージも納得できるでしょうかね。
それにしてもTheとは、良く考えたものだと思います。そのコンセプトに原点回帰を強く謳っていますが、先代のNewを否定していませんし。と、考えると、次世代はどうするのだろうか思います。デビューしたばかりなのに。