#318 CX-5にあふれる、基本に忠実であることをベースとしたスポーティな性能。

 さて、引き続いてディーゼルエンジン搭載モデルの話題。先日、マツダCX-5の試乗会があり、いろいろな仕様にじっくりと乗ってきました。結論としては、正論だらけのクルマってところでしょうか。それは走行性能はもちろん、価格帯やらラインナップに至るまで。言い換えれば、非の打ち所がないとも言えますし、ウィークポイントを語ることは重箱の隅をつつくかのよう。ただ、製品に対する取り組み方を含めて、全くもっての新製品でありますから、未完な部分が極わずか見えてしまっているのも事実。強いて言えば、ウィークポイントはそれくらいで、あとは好き嫌いの問題かと。
 ひとことで言うならば、個々の仕上がりがよく、そして、トータルバランスがいい。注目のディーゼルエンジンは、極太なトルクだけではなくそのフィーリングにフラット感を表現し、ステアリングは戻しを含めて適切な操舵感が存在し、ブレーキは異と不足を感じさせないフィーリングを作り上げています。一方のガソリンは比較すると、トルク感、つまりパンチが薄いものの、フラット感を優先させた結果、扱いやすさを手に入れ、そして軽快感を愉しめるセッティング。で、17インチ仕様はコンフォート感を大切にしながら、不足ないグリップ感を持っておりましたし、19インチは不快な固さを残さず、かといってシャシーとのバランスを優先したグリップ感が好印象。今回は5グレードに試乗しましたが、いずれのキャラクターを、何かを犠牲にすることなく表現しており、それがCX-5の美点にもなっていました。
 ところが、CX-5に対する高評価はそれだけに止まりません。試乗後に聞いて驚いたのですが、ダンパーはタイヤサイズに関わらず1タイプのみでまとめあげているそうで。2サイズも異なるタイヤなのに、1種類のダンパーで不足を感じさせない性能を実現してしまうとは、まさに天晴れかと。ただ、その理由はコストだけではないようで。製品としての完成度を高めるためには、それぞれのパーツを極め、特化したバランスを作り上げるというのが正攻法。しかし、ハイバランスの上に成立させると、経年変化はもちろん、構成パーツを交換したことで、簡単にバランスを崩してしまうことがあり、それによって製品そのものに対する評価が変わる恐れがあると。まぁ、分かりやすい例としてはタイヤ。アフターものに変えた際、サイズを変更した時、乗り味が大きく変わってしまい、それについて、タイヤではなくクルマに対して不満を抱いてしまう人もいるようで、それを避ける意味合いもあると。つまり、満足度をさらに高める手段であると。
 なるほどと思いつつ、そういえば、現行型のアルファード/ヴェルファイアの試乗会で、16、17、18インチで同じダンパーを採用した理由のひとつに、やはりアフター云々というものがあったことを思い出しました。で、さらに気付いてみれば、ダンパー1本化(仕様を減らす)という動きは、スバルからもBMWからも聞こえていましたっけ。まぁ、このイマドキの仕立て方に、おや? と思うところもあるのですが、このCX-5の仕上がりをみると、安易な共用ではなく、許せる範囲内に収められているならば、肯定的に捉えるべきなのかなと感じました。
 ただ、だからといって、CX-5が完璧ではなく、仕様に不満に届かない差が見られるのも事実。試乗した仕様の中では、意外にもガソリン+4WD(17インチのみ)がベストと感じました。それは足の良さを感じ取れる無理のないパワー感に尽きるでしょうか。ディーゼル? もちろん、良いのですが、出力特性が大きく異なるエンジンを1つのタイヤ、1つのダンパーでまとめ切るにはあと少しの熟成が必要であり、そういう観点からするとディーゼルエンジン搭載車よりもガソリンエンジン搭載モデルと思ったわけです。ただ、初物ゆえにバラツキもあるようですが。

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