#305 視点を変えると見えてくる、国産車の安すぎる価格、輸入車のリーズナブル感。

  毎年、プレス向けに輸入車が一堂に会した試乗会が行われます。それこそ100台規模で。ほぼ乗っているとはいえ、車種はもちろん、グレードとしては未試乗のモデルあり、再確認、再認識の意味合いから、心待ちにしている試乗会のひとつです。右の写真は、試乗したクルマですが、今回はあえてテーマを決めず、仕事やら個人的好みやらで乗りました。総論としてはですね、個性とはこういうものであり、没個性とはああいうものであることを、再認識したことに尽きましょうか。輸入車はたしかに割高かもしれませんが、逆の見方をしますと、国産車が安すぎるのではないかと思いました。いや、それを否定はしません。安いことはいいことでもありますから。でも、多方面から見てですね、安いのには理由があるもの事実で、そこの加減ってのはとても難しいのかなとも思いましたが。
 さて、今回は試乗したモデルそれぞれに感じたことに触れてみましょうかね。
 プジョー508 SWは、やっぱりAllueかなと思いました。プジョーにあるのは、気取らないカジュアルさをベースとしたオシャレな感覚であり、それは作らない、偽らない、でも、そもそも持ち合わせていなければ身につけられない、そんなテイスト。ですから、ファブリックがいいわけですし、この価格も内容もとても魅力的。オーナーになれること、人に憧れてしまう、そんなクルマですな。あ、407同用、アドバンテージはリアシートから強く感じました。
 日本のジープとして初の2WDモデルを投入したパトリオット。2.0Lであることも手伝って、走りに軽快感があふれており、とてもまとまりが良かった。そもそも、このプラットフォームをいちばん上手く使いこなしているのは、ジープではないかと。本家よりも。燃費はさておき。258万円という価格もジープを再び身近な存在に引き戻した意味合いからすると大歓迎。高いだけのジープは、ジープのフリーダム的なコンセプトとはリンクしませんから。
 フォード・エクスプローラー(V6)は、乗り味は以前のままでした。つまりですね、このクルマを知らなかった人たちからすると、エクステリアと走りがリンクしないと感じるのかなと。特にいい意味で緩さあふれるステアリングフィールは、このフロントフェイスとは似つかわしくないのかも。それをどう納得させるかが、一般におけるこのクルマの評価のキーになるのでしょう。ちなみに、燃費は想像以上に良く、渋滞にはまりながらも7km/Lを割らずでした。
 フェイスリフトしたルノー・コレオスですが、あいかわらず、その真価はとっても分かりづらいところにあり、乗り込まないと見えて来ません。しかし、見えた瞬間にパーンと歓びが満ちあふれるルノーらしさがありました。個人的には改良前モデルのほうがアート的であり好みですが、この前期モデルのデザインにしがみつく人がいるというのも、またルノーらしさかなと。グラスルーフは必須ですがシートはファブリック、でも、組み合わせ不可能ですが。
 ミニのクーペ・クーパーは、今回の試乗会で、個人的に注目していた1台でした。ただ、試乗したところ、クーペはもっと刺激的でいいんじゃないかと感じました。JCW的なノリですな。強烈なグリップ感としなやかさを出そうとするシャシーがちぐはぐで、ハーモニーがないのです。おかしいなと思って調べたら、標準タイヤは15インチ。あ、それなら、クーパー+クーペの組み合わせはありかもしれません。それにしても、希有なミニです。
 最近のBMWは、最新モデルの仕上がりから、新しいモデルに対して乗らずして悪いわけがないことが簡単に想像できます。で、この2.0Lターボエンジンを搭載したZ4sDrive20iも、まさにそのとおりでした。もう、最高。それは、スポーツカー的な刺激だけではなく、クルマとしての完成度にも強く感じました。クルマの挙動は実に分かりやすく、コントロールしやすく、ってサーキットレベルの話ではなく。試乗車はパッケージングによりリアタイヤが255サイズとなっていましたが、ギリギリ、コンフォートも確保しており、それも許せる範囲。最近のBMWは、タイヤサイズが変わっても、ベースで作り上げたバランスをしっかりとキープし、不満となるラインを超えないギリギリを攻めるのが、ほんとに上手い。そして、そのバランス、気楽さを含めた楽しめるという感覚からすれば、Mスポーツも35iでもなく、この20iがベストではないかと。価格もスッピンならば499万円と、絶対値は高いけど、内容を考えると安い。ひさびさに出会った、買いの1台ですな。
 というように、どのクルマも個性がありました。まぁ、ミニにおいては、バリエーションを広げすぎな気もしますが、それもまた個性なのかなと。つまりですね、クルマって、どれも同じだと思ったらば大違い。乗り味から、楽しさに至るまで。その違いは、運転に慣れた人でないから分からないと思われるかもしれませんけど、実は誰でも感じ取れるものだったりします。選ぶ側もそこに気付いて欲しいですし、作り側もそこに着目できるかできないかが大切ではないかと。そう、このタイミングに、分岐点があるのかなと。

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