#272 らしさが存分に詰まった、最新の輸入車(BMW1シリーズ/シトロエンC4)。

  最近、とっても味のある、気持ちのよい2台のニューモデルに出会いました。
 1台目は、BMWの新しい1シリーズ。最近のBMWはとってもいいと、よく口にしていますが、ほんとにいい。それは、BMWってばやっぱスポーティだしぃ、シルキーシックスじゃんとか、そんな理由ではなく、クルマとして、ブランドとしての方向性に迷いがなく、それに見合った仕上がりを見せているところがすごくいい。Mスポーツをパッケージ化して、ウリなスタンスを見せた頃のBMWは、商品性を優先するがばかりに、その乗り味にゴツゴツ、ゴトゴト感を許しており、その固さってBMWとしてOKなんですか? と問いたくなるものがありました。つまり、バランスがイマイチと。しかし、最近は、それが消え去りました。トルク感を明確に表現したエンジンフィールは、ターボであろうとNAであろうと関係なく存在し、そして取り戻したしなやかな足回りは、まじめなハンドリングと相まって、街中ドライブでも心躍らせてくれるものに。
 で、1シリーズですが、価格以上に質感を高めておりまして乗り味はもはや3シリーズクラスであり、チープさが見当たりません。120iの高出力版1.6Lターボなんて、いらないでしょ、このパワーってほど。一方の116iがベーシックかといえば、そんなことはなく、スタンダードであり、必要にして十二分だったりします。いやはや、完敗。それでいながら、価格は116iで308万円、120iで367万円と、ライバルと比較すると高めですが、その分の価値は十二分にあると思います。というか、1シリーズがここまでになってしまうと、明日だったかに発表される3シリーズがどうなってしまっているのかを、想像できるような、できないような。凄いです、最近のBMWは。
 最近のシトロエンもとってもいいと思います。もう1台は、シトロエンのC4でした。1.6LエンジンはBMWと共同開発しており基本的には同じものですが、その味付け部分はかなり異なっており、それぞれの乗り味に見合ったものになっていました。路面の凹凸を確実にいなしながら、サスをじんわり動かすことでゆったり感を作り上げ、揺れすら気持ちいいという表現がぴったりのコンフォート感を手に入れています。しかし、それだけに止まらない。それはハンドリングはもちろん、シートやらデザインにも共通したものであり、バランスされていて、破綻していないところが美点であり、まさにシトロエンの美学そのもの。で、ワインディングへと持ち込めば、路面のトレース感はそのままに、何事もなかったかのように駆け抜けてしまう。もはや、脱帽。
 試乗したのはボトムグレードのセダクションで、1.6L(NA)+4ATを搭載したグレードでして、たしかに4速に不足は感じますが,不満は感じませんでした。いざという時にはアクセルを踏みこめばいいだけですから(キックダウンさせればいいだけ)。そんな、懐かしい走らせ方は、むしろ愉しさに繋がっていますし。ですから、すでにラインナップにある6速ATを組み合わせたら……なんてことは思わず、真っ先にMTで乗ったらさぞかし楽しいだろうに、とそんなことを強く感じさせてくれるモデルなんですな。しかも、256万円。この質感を備えながら、この価格はリーズナブル感すら感じます。ゴルフとどっちを選ぶか? かなり難しい、ほんとに難しい。そのぐらいにいいのです。
 両者に共通するのは、そのブランドらしさ、そのモデルらしさにつながる味があること。どちらがいいとか、優劣は付けられません。というか、付けることはナンセンスではないかと思います。こういった“らしさ”こそが、オリジナリティであり個性ではないかと。で、それらを持っている工業製品ってのは、創造性を豊かにしてくれるものであって、ライフスタイルを楽しいものへと導いてくれるものだなと、つくづく思うのですな。
 ちなみに、1シリーズのATは8速。C4の倍です、倍。いやはや。

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